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蓄電池に土地を貸すといくらになるか ― 地代の相場と契約で見る5項目

2026.07.16(更新 2026.08.20) ・ 土地活用

「使っていない土地があるが、売るほどではない」というご相談をよくいただきます。系統用蓄電池の用地として貸す場合、地代はいくらになるのか。数字の出どころと、契約前に読んでおいていただきたい条項をまとめました。

土地を貸す形とはどういう仕組みか

設備を持つのは事業者で、地権者は土地を貸すだけという形です。機器の調達、工事、電力会社との協議、運用と点検は事業者側が負担します。地権者の側は初期投資を出さず、契約期間中は地代を受け取ります。

自分で設備を持って事業として運用する形もありますが、この記事では貸す側の話に絞ります。

地権者 土地を貸す 初期投資:なし 管理の手間:なし 事業者 機器の調達・工事 電力会社との協議 運用・点検 土地を貸す 地代(年額) 契約期間は15〜20年程度。期間中は地代が入り、終了時は契約更新か設備を撤去して返還します。 設備を自分で持つ場合は、この右側をすべて自分で負担する形になります。
土地を貸す形の役割分担。地権者は初期投資を出さず、事業者が設備・工事・協議・運用を負担します。

「相場」は公表されていません

先にお断りしておきます。蓄電池の用地賃料について、公的な統計はありません。国が集計して公表している数字は存在しません。

では世の中に出ている数字は何かというと、用地を募集している事業者が提示している条件です。それを集めると、年額で1,000〜5,000円/㎡あたりに収まります。ただしこれは募集の提示価格であって、成約価格の統計ではありません。

そして、この幅の上のほうは小さな区画にしか当てはまりません。後述しますが、面積が大きくなるほど㎡単価は下がります。5,000円/㎡という単価を1,000㎡に掛けて年500万円、という計算にはならないということです。

実際、賃料が個別協議で決まることは、公募の要綱を読むとはっきりします。北陸電力送配電が変電所用地を蓄電池事業者に貸し付けた公募では、こう定められています。

(7)土地貸付料の希望価格 ……上記(1)〜(6)による評価が同一の場合は、希望価格等により順位を決定します。 賃借料を含む土地の貸付内容について、当社は優先事業者のみと協議を行います。

送配電事業者の公募でも、金額は事前に示されず、事業者が希望価格を提示して個別に協議する形です。「一律の相場表」は、この業界には存在しません。

太陽光と比べるとどれくらいか

水準の見当をつける材料はあります。太陽光発電の土地賃借料は、年額150円/㎡が最も多いとされ、この数字は経済産業省の調達価格等算定委員会で買取価格を算定する際の根拠にも使われてきました。

用途 年額の目安
太陽光発電の用地 150円/㎡ 前後
蓄電池の用地(募集条件) 1,000〜5,000円/㎡

6倍から30倍以上の開きがあります。理由は面積あたりの事業規模の差です。太陽光は広い面積を必要とする一方、蓄電池は20㎡ほどに2,000万円前後の設備が載ります。同じ1㎡でも、そこで動く事業の大きさが違います。

そのぶん、条件の合わない土地に高い金額が出ることはありません。次に、何がその金額を決めているのかを書きます。

なぜ幅が大きいのか

地代は、その土地が事業として成立する度合いで決まります。私たちが金額を検討するとき、実際に見ているのは次のような点です。

見ている点 地代への効き方
系統の空き容量 空きがなければ事業が成立せず、金額の話にならない
連系点までの距離 遠いほど引き込み工事費が増え、地代に回せる分が減る
造成の要否 傾斜地・軟弱地盤は造成費が乗る
搬入経路 道路が狭く拡幅が必要なら、その費用が乗る
周辺の相場 近隣の駐車場・資材置き場としての賃料水準

つまり同じ面積でも、電柱が近くて平坦で道路づけの良い土地と、そうでない土地では、提示できる金額が変わります。「うちの土地はいくらか」は、現地と系統を見てからしかお答えできません。

単価をそのまま面積に掛けてはいけません

ここで注意が要ります。㎡単価に面積を掛ければ年額が出る、という計算は成り立ちません。

単価は、面積が大きくなるほど下がります。 理由は、蓄電池の収益が土地の広さではなく設備の容量で決まるからです。土地が2倍になっても設備が2倍にならなければ、地代に回せる原資は増えません。高い㎡単価が成立するのは、小さな区画に設備が詰まっている場合です。

私たちの実務感覚では、年額の上限はこのあたりです。

面積 年額の目安(上限側) ㎡単価に直すと
20㎡(約6坪・低圧1基分) 数万円 高め
100㎡(約30坪) 十数万円
300㎡(約91坪) 数十万円
1,000㎡(約303坪) 150万円程度が限度 約1,500円/㎡

300坪で年150万円というのが、実際に見ている上限です。1,000㎡に5,000円/㎡を掛けて500万円という計算にはなりません。

契約期間が15年なら、この15倍が期間全体の受取額です。300坪なら、上限で2,250万円ということになります。

小さな面積では、年額そのものは大きな金額になりません。草刈りや管理の手間がなくなること、固定資産税の負担に対して収入が立つことを含めて考えていただくのが実際的です。

高圧と低圧で必要な広さが違う

必要面積は規模で変わります。高圧の蓄電所であれば700〜1,000㎡程度が一つの目安になり、低圧(50kW未満)であれば駐車場2台分程度から検討できる場合があります。

小さな土地の場合は低圧が候補になります。低圧の仕組みは低圧系統用蓄電池とはにまとめました。どちらが向くかの判断軸は高圧と低圧の違いで整理しています。

契約前に確認する5項目

金額よりも、こちらのほうが後で効いてきます。

1. 契約期間

蓄電池の事業期間は15〜20年程度を想定します。土地の賃貸借契約がこの期間をカバーしているかを確認してください。事業期間より契約が短いと、途中で条件交渉が必要になります。

2. 賃料の改定条項

15年、20年という期間では、物価も周辺の賃料水準も動きます。改定の有無、改定できるタイミング、改定の基準が書かれているかを見てください。改定条項がないまま20年固定という契約もあり得ます。

3. 中途解約と原状回復の範囲

事業者側の事情で早期に撤退した場合、どこまで元に戻すのかを決めておく必要があります。基礎コンクリートの撤去まで含むのか、地面をならす程度なのか。この範囲が曖昧なままだと、契約終了時に揉めます。

4. 固定資産税の扱い

農地や山林を蓄電池の用地にする場合、地目が変わって固定資産税の評価が変わることがあります。誰が負担するのか、地代がその増加分を含んでいるのかを確認してください。金額の影響は土地ごとに違うので、税理士や市町村の資産税課にご相談いただくのが確実です。

5. 事業者の変更・転貸

事業者が事業を譲渡したり、設備を売却したりする可能性があります。その場合に契約がどう引き継がれるのか、地権者の承諾が必要なのか。ここは契約書に書かれていないことがあります。

売るのと貸すのはどちらが良いか

これは土地の事情によります。まとまった現金が必要であれば売却、長く持ち続けるつもりであれば賃貸、という整理が一般的です。

ただ実務では、そもそも売却先が見つからない土地というのが相当あります。住宅用地としては狭い、事業用地としては立地が合わない、農地としては担い手がいない。そういう土地に対して、蓄電池の用地という買い手・借り手が出てきたのが今の状況です。

私たちは売買と賃貸の両方を扱っているので、どちらが良いかという相談の形で構いません。

貸せる土地の条件

金額の前に、そもそも成立するかどうかがあります。

  • 近くに電柱・配電線があり、連系点まで届く
  • 系統に空き容量がある
  • 接道していて、重量物の搬入経路がとれる
  • 近隣の住宅から一定の距離がある
  • 浸水・土砂災害などのハザードが大きくない
  • 開発規制・条例で許可の見通しが立つ

このうち系統の空き容量は、地図と公開情報でこちらが調べられます。土地の条件を細かく見た内容は用地に向く土地・向かない土地にまとめています。

愛知県内の蓄電所。設置後は事業者が運用と点検を行うため、地権者の方に管理の手間は生じません
愛知県内の蓄電所。設置後は事業者が運用と点検を行うため、地権者の方に管理の手間は生じません

難しいと判断するケース

すべての土地でお引き受けできるわけではありません。系統に空きがなく当面の見込みも立たない地点、搬入経路が確保できず拡幅の見込みもない土地、ハザードの想定が大きく対策費が事業性を上回る土地。こうした場合は、金額の提示以前に難しいとお伝えしています。

相場だけを聞いて期待値が上がったあとで「できません」とお伝えするのは、お互いにとって良くありません。先に現地と系統を確認させていただき、成立の見込みが立ってから金額の話に進みます。

よくある質問

農地でも貸せますか。 農地転用の許可が必要になります。地目や区域によって難易度が変わるため、まず登記と場所を確認させてください。営農を続けながら発電する形は営農型太陽光の枠組みになります。

相続で取得した土地で、境界がはっきりしません。 測量が必要になる場合があります。境界の確定は契約の前提になるので、その段取りも含めてご相談ください。

近隣への説明は誰がやりますか。 事業者側で行います。地権者の方に説明の負担をお願いすることはありません。

期間が終わったらどうなりますか。 契約の更新か、設備を撤去して返還するかのどちらかです。撤去範囲を契約時に決めておくのが、前述の3番目の項目です。

ご相談の前に

所在地(住所または地図上の位置)、おおよその面積、前面道路の状況。この3つがわかれば、系統と規制の当たりをこちらで調べて、成立の見込みをお伝えできます。登記事項証明書があればより早く進みます。

事業者側の事情も変わりました。2026年8月から接続検討の申込みに件数上限が設けられ、手当たり次第に押さえる進め方ができなくなっています。条件の良い土地から順に決まっていく流れです。低圧の全体像は低圧系統用蓄電池とはにまとめています。

でんちくん

「いくらになるか聞くだけ」でも構いません。金額は土地の条件で変わるので、まず場所と広さを教えてください。難しいときは、その理由もあわせてお伝えします。

でんちくん/用地担当より

土地の活用をお考えの方は土地所有者の方へに、立場別のご説明をまとめています。他の活用方法との比較は雑種地・遊休地・農地の活用方法をご覧ください。

この記事の参照元と、数字の性質について

蓄電池の用地賃料に公的な統計はありません。 この記事に載せた1,000〜5,000円/㎡は、用地を募集している事業者が提示している条件を集めたものであり、成約価格を集計したものではない点にご留意ください。

実際の金額は、系統の状況・造成の要否・搬入経路・周辺の賃料水準によって上下します。個別の土地についてはご相談ください。

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