Column | 系統用蓄電池
系統用蓄電池の用地に向く土地・向かない土地 ― 判断の順番
2026.06.20(更新 2026.08.24) ・ 系統用蓄電池
「空いている土地があるので蓄電池を置けないか」というご相談をよくいただきます。広さより先に決まるのは、電気を引き込めるかどうかです。判断の順番を、自分で調べられる確認先とあわせて整理します。
順番を間違えると、やり直しになります
見る項目は5つありますが、同じ重みではありません。
現地に行く前に地図で最初に見るのは、電柱と配電線の位置です。造成や設計を先に進めてから系統が駄目だと分かると、そこまでの作業がまるごと無駄になります。
いま、順番の重要性が上がっています
蓄電池の申込みが急増しています。資源エネルギー庁の資料から引きます。
全国(沖縄を除く)の契約申込みの状況 2024年9月末時点 621万kW → 2025年9月末時点 2,431万kW(約3.9倍)
1年で約3.9倍です。これを受けて、2026年8月1日から1事業者あたりの接続検討数に上限が設けられました。試算値はエリアごとに異なります。
| エリア | 上限数(試算) | エリア | 上限数(試算) |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 5 | 北陸 | 8 |
| 東北 | 6 | 関西 | 10 |
| 東京 | 11 | 中国 | 5 |
| 中部 | 5 | 四国 | 5 |
| 九州 | 8 |
※2026年3月時点の試算で、実際の上限数とは異なる可能性があるとされています。
手当たり次第に申し込んで、通ったものだけ進めるという進め方ができなくなりました。1件の枠を何に使うかを選ぶ必要があります。だから、申し込む前の見極めが効いてきます。
① 系統は自分でも調べられます
空き容量の情報は公表されています。
- 電力広域的運営推進機関「系統情報サービス等」— 全国の系統情報の入口
- 各一般送配電事業者の系統情報ページ(例:東京電力パワーグリッド)— エリアごとの空き容量マップ等
ただし、公表値は送電線・変電所の単位です。その土地から実際に引き込めるかは、連系点までの距離や配電線の状況で変わります。目安として見て、確度が要るなら接続検討にかけることになります。
低圧で連系する場合は、近くに電柱があるかどうかが実務上の出発点になります。低圧の考え方は低圧系統用蓄電池とはにまとめています。
② 面積は、機器の大きさだけでは決まりません
必要な広さは規模で大きく変わります。
| 区分 | 面積の目安 |
|---|---|
| 高圧・特別高圧 | 700〜1,000㎡ |
| 低圧(50kW未満) | 20㎡〜 |
低圧なら駐車場2台分ほどから検討できる場合があります。ただし機器を置くスペースだけでは足りません。点検のための離隔と、搬入経路まで含めて収まるかを見ます。図面上は置けるのに、現地で搬入路が足りない例は実際にあります。
③ 搬入は図面では分かりません
蓄電池は重量物です。道路から設置場所まで、車両が入って荷下ろしできる経路が要ります。見るのは次の点です。
前面道路の幅員。曲がり角の内輪差。電線や標識の高さ。地盤の支持力。そして工事車両を停められるかどうか。このあたりは航空写真では判断できないので、現地で見ます。
④ ハザードは無料で確認できます
国土交通省のハザードマップポータルサイトで、洪水・土砂災害・高潮などの想定区域を住所から確認できます。
想定が大きい土地でも、対策を打てば設置できることはあります。問題は対策費が事業性を上回るかどうかです。浸水想定が深い区域では基礎の嵩上げが必要になり、その費用で採算が合わなくなる場合があります。
⑤ 土地の種類で、必要な手続きが変わります
農地であれば農地法の転用許可、保安林であれば解除の手続きが要ります。市街化調整区域では開発許可の見通しも確認します。
いずれも「できない」と決まっているわけではなく、時間と費用がどれだけかかるかの問題です。ただし農用地区域内の農地のように、転用が原則として認められない区分もあります。営農を続けながら発電する形については営農型太陽光の新ルールをご覧ください。
「うちの土地、狭いから無理だよね」というお電話をよくいただきます。広さより先に見ているのは、電柱がどこを通っているかです。まず場所だけ教えてください。狭くても電柱が近ければ、話が進むことがあります。
でんちくん/用地担当より権利関係は、あとから固めるのでは間に合いません
土地の条件が良くても、権利の書類が期限に間に合わなければ連系予約が取り消されます。連系承諾から2か月以内に、登記簿謄本や賃貸借契約書の写しといった使用権原を証する書類の提出を求める方向が示されています。
この要件化は2026年10月1日付(予定)で運用開始とされ、同日以降に契約申込みの受付を行う案件から適用されます。既に事業を実施している土地での増強・更新・改修などには例外が示されています。
以前のように「系統を押さえてから土地を交渉する」進め方は成り立ちにくくなりました。詳しくは系統用蓄電池の「空押さえ」対策と接続検討の申込みに件数上限にまとめています。
難しいとお伝えするケース
すべての土地で成立するわけではありません。次のような場合は、難しいとお伝えしています。
系統に空き容量がなく、当面の見込みも立たない地点。搬入経路が確保できず、道路の拡幅も見込めない土地。ハザードの想定が大きく、対策費が事業性を上回る土地。近隣との距離が近く、理解を得るのが難しい立地。開発規制で許可の見通しが立たない区域。
無理に進めて後工程で止まるほうが、損失は大きくなります。難しいと判断した場合は、その理由を添えてお伝えします。
よくある質問
何坪から検討できますか。 低圧であれば20㎡程度から検討できる場合があります。ただし面積より系統の条件が先に効きます。
山林や傾斜地でも置けますか。 造成費次第です。高低差が大きいほど費用が膨らみ、同じ収益でも採算が変わります。
空き容量は自分で調べられますか。 各一般送配電事業者が公表しています。ただし公表値は送電線・変電所の単位なので、その土地から引き込めるかは別途の確認になります。
貸すのと売るのはどちらがよいですか。 土地の条件と、資金をどうするかで変わります。賃料の考え方は蓄電池に土地を貸すといくらになるかにまとめています。
ご相談の前に
所在地(住所または地図上の位置)、おおよその面積、前面道路の状況。この3つがわかれば、系統と規制の当たりをこちらで調べて、成立の見込みをお伝えできます。「この土地は対象になるのか」という段階で構いません。
土地の活用としてのご相談は土地所有者の方へ、案件・協業のご相談は投資家・法人の方へをご覧ください。
この記事の参照元
- 資源エネルギー庁「発電等設備における系統アクセス手続きの規律強化について」(2025年12月24日 資料3)— 契約申込みの推移(621万kW→2,431万kW)、使用権原を証する書類の提出時期
- 資源エネルギー庁「系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について」(2026年4月16日 資料2)— 接続検討数の上限、運用開始日
- 資源エネルギー庁「系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について」(2026年6月10日 資料2)— 使用権原の提出要件化の開始時期と既設設備の例外
- 電力広域的運営推進機関「系統情報サービス等」/国土交通省「ハザードマップポータルサイト」— 用地の一次確認に使える公表情報
引用は各資料の公表時点の記載によるものです。接続検討数の上限は試算値であり、実際の数値は各一般送配電事業者の公表をご確認ください。