Column | 系統用蓄電池
系統用蓄電池の接続検討に件数上限 ― 2026年8月開始の新運用とエリア別の上限数
2026.08.06 ・ 系統用蓄電池
2026年8月1日から、1つの事業者が同じエリアで同時に持てる接続検討の件数に上限が入りました。開発の進め方に直接効く変更なので、公表資料に当たって整理します。
何が決まったのか
国の審議会(再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会)で、系統用蓄電池の接続検討数に1事業者あたりの上限を設けることが整理され、2026年8月1日から運用が始まりました。
対象になるのは、接続検討の申込みから結果の回答までの範囲です。回答が返ってくれば、その案件は枠から外れます。
エリア別の上限数
上限は全国一律ではなく、一般送配電事業者ごとに異なります。
| エリア | 上限数 |
|---|---|
| 北海道 | 5件 |
| 東北 | 6件 |
| 東京 | 11件 |
| 中部 | 5件 |
| 北陸 | 8件 |
| 関西 | 10件 |
| 中国 | 5件 |
| 四国 | 5件 |
| 九州 | 8件 |
東京と中部で倍以上の差があります。中部エリアで開発を進める場合、5件を超えた時点で次が出せなくなるということです。
上限数の算定は、過去年度における1事業者あたり3か月間の接続検討受付件数をもとに、平均値+2σ、または最低5件のいずれか高い方とされています。つまり「これまでの平均的な事業者の動き方」を基準に、そこから大きく外れる量の申込みを抑える設計です。
分かれ目は「申込日」ではなく「受付済みかどうか」
ここが実務で一番間違えやすい部分です。
2026年7月31日までに受付済みの申込みは、上限数を超えていても従来どおり回答されます。一方、7月31日までに受付がなされていない申込みには上限が適用され、超える分については申込書類の確認等が行われません。
東京電力パワーグリッドは、受付済みの定義を「申込書類に必要事項が記載されていること及び検討料が入金されていること」としています。7月中に申込みを出していても、書類に不備があった、あるいは検討料の入金が8月にずれ込んだ場合、その案件は上限の対象に入ります。
「7月中に出したから大丈夫」ではありません。入金まで完了していたかどうかで分かれます。
低圧は対象になるのか
東京電力パワーグリッドの告知は、表題が【高圧・特別高圧】と明記されています。北海道電力ネットワークの告知には電圧区分の記載がありません。
私たちの読みでは、この上限は高圧・特別高圧の系統用蓄電池を対象とした運用です。低圧(50kW未満)の連系手続きは接続検討の位置づけが異なるためです。ただし、エリアによって告知の書き方に差があるので、低圧で進める案件については、該当する一般送配電事業者の告知を個別に確認しています。
低圧系統用蓄電池の全体像は低圧系統用蓄電池とはにまとめました。
なぜ導入されたのか
背景にある数字が、この変更の性格を端的に示しています。
審議会の資料によれば、2025年12月末時点で、系統用蓄電池の連系済みは約64万kWである一方、接続検討の受付中が約1億7200万kW、契約申込みの受付中が約3000万kWでした。
検討中の量が、実際に動いている設備のおよそ270倍あるということです。この全部が形になるとは考えにくく、審議会でも一部の事業者が同一エリアに100件を超える申込みを行っている例が示されています。
先に枠を押さえておくという動き方が積み重なった結果、検討業務が滞留し、本当に事業化する案件の回答まで遅れる。上限の設定は、その滞留への対応です。
上限に達したらどうなるか
超過分は、申込書類の確認等が行われません。差し戻しというより、受け付けられないという扱いです。
対象範囲にある案件が上限を下回った後であれば、あらためて申し込むことができます。回答が返ってきた案件から順に枠が空くので、そこへ次を入れていく形になります。
開発の進め方はどう変わるか
数を並行して出す進め方が使えなくなるため、どの地点から先に出すかという判断が必要になります。私たちが順番を決めるときに見るのは、次のような点です。
| 見る点 | 判断の内容 |
|---|---|
| 土地の権利関係 | 契約または権利取得の見込みが立っているか。地主との話が固まっていない地点を枠に入れると、回答が出るまで枠を塞ぐ |
| 系統の見込み | 公開情報から空き容量の当たりがついているか |
| 造成・搬入の成立 | 現地を見て、工事として成立する見通しがあるか |
| 回答までの想定期間 | 長くかかりそうな地点は、枠の回転が遅くなる |
枠が有限になったことで、「とりあえず申し込む」の費用が上がりました。現地確認を先に済ませて、成立の見込みが立った地点から順に出す。以前から私たちはその進め方でしたが、それが制度上も合理的になった形です。
用地の見方は系統用蓄電池の用地に向く土地・向かない土地、連系までの全体の流れは連系までの流れで解説しています。
間違えやすいのは「7月中に申し込んだか」ではなく「7月31日時点で受付済みか」という点じゃ。書類の不備や検討料の入金遅れがあると、上限の対象に入ってしまう。
はかせ/制度解説よくある質問
すでに申し込んでいる案件はどうなりますか。 7月31日までに受付済みであれば、上限を超えていても従来どおり回答されます。受付済みかどうかは、書類の記載と検討料の入金で判断されます。
上限は今後変わりますか。 算定方法が公表されているため、運用状況によって見直される可能性はあります。最新の扱いは各一般送配電事業者の告知でご確認ください。
エリアをまたげば上限は増えますか。 上限は一般送配電事業者ごとに設定されています。ただし、エリアを分散させるために成立見込みの低い地点へ広げるのは、順序が逆だと考えています。
土地の権利書類は求められますか。 審議会では、実行確度の高い案件を優先する方向での議論が進んでいます。今回の上限設定と合わせて、権利関係の確認が重くなる流れは意識しておいた方が良いと思います。
ご相談の前に
用地をお持ちの方、案件をお持ちの事業者の方、どちらのご相談も受けています。所在地・面積・接道の状況がわかれば、系統と規制の当たりをこちらで調べます。
この上限が設けられた背景は系統用蓄電池の「空押さえ」対策に、低圧で検討する場合の全体像は低圧系統用蓄電池とはにまとめています。
案件や協業のご相談は投資家・法人の方へ、土地の活用としてのご相談は土地所有者の方へをご覧ください。
この記事の参照元
- 東京電力パワーグリッド「【高圧・特別高圧】系統用蓄電池における一事業者あたりの接続検討数の上限設定による対応について」(2026年7月24日)
- 北海道電力ネットワーク「一事業者あたりの系統用蓄電池の接続検討数の上限設定について」
- 資源エネルギー庁 再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会「系統用蓄電池をはじめとする発電等設備の迅速な系統連系に向けた対応について」(2026年4月16日)
上限数および滞留の数値は上記資料の公表時点のものです。運用は変わる可能性があるため、実際の申込みにあたっては各一般送配電事業者の最新の告知をご確認ください。