Column | 低圧蓄電池
低圧蓄電池を束ねて市場に出す条件 ― 最低入札量1MWと、容量市場との両取りに残る論点
2026.08.22 ・ 低圧蓄電池
「2026年4月から低圧も需給調整市場に参加できる」と説明されます。間違いではありませんが、単体で出せるという意味ではありません。どれだけ束ねる必要があるのか、どの商品なら現実的なのかを、一次資料から整理します。
結論を先に
- 需給調整市場の最低入札量は全5商品とも1MW。50kW未満の低圧なら20基以上をまとめる計算になります
- 商品によって専用線が必須のものと、簡易指令システムでよいものが分かれます
- 容量市場との両取りについては、まだ整理されていない論点が残っています
最低入札量は全商品1MWです
電力需給調整力取引所(EPRX)の商品要件から引きます。2026年3月13日の第6版です。
| 商品 | 指令・制御 | 応動時間 | 継続時間 | 回線 | 最低入札量 |
|---|---|---|---|---|---|
| 一次調整力 | オフライン(自端制御) | 10秒以内 | 5分以上 | 専用線のみ(オフライン監視の場合は不要) | 1MW |
| 二次調整力① | オンライン(LFC信号) | 5分以内 | 30分 | 専用線のみ | 1MW |
| 二次調整力② | オンライン(EDC信号) | 5分以内 | 30分 | 専用線 または簡易指令システム | 1MW |
| 三次調整力① | オンライン(EDC信号) | 15分以内 | 30分 | 専用線 または簡易指令システム | 1MW |
| 三次調整力② | オンライン | 60分以内 | 30分 | 専用線 または簡易指令システム | 1MW |
刻み幅(入札単位)は1kWですが、入口の1MWに届かなければ応札そのものができません。
低圧が狙える道は2つあります
回線の要件は商品によって違い、ここが低圧の可否を分けます。
道① 一次調整力(オフライン監視)
一次調整力は、そもそも指令・制御がオフラインです。中央から信号を受けるのではなく、機器が自分で周波数を見て動く自端制御です。そのうえで監視もオフラインにすれば、専用線が不要になります。
さらに、オフライン監視にすると要件が緩みます。
※3 オフライン監視の場合、応動時間「30秒以内」、継続時間「設定なし」
通常の10秒以内・5分以上が、30秒以内・定めなしになります。分散した低圧の地点に専用線を引かなくてよく、要件も緩むため、低圧の主戦場になり得ます。条件は2つ、事後に数値データを提供することと、並列が必須であることです。
道② 二次調整力②・三次調整力①・三次調整力②
これらは簡易指令システムで参加できます。専用線は要りません。オンラインで指令を受ける形で、応動時間は5分〜60分と緩めです。
避けたほうがよいのが二次調整力①です。専用線のみで、しかもLFC信号に5分以内で追従する必要があります。分散した低圧の地点ごとに専用線を引くのは現実的ではありません。
もう一点、収益前提に効く注記があります。
※2 現行は上げ区分のみ調達
上げと下げの両方で稼げる前提を置いた収支は、現状と噛み合いません。
容量市場との両取りはどうなるのか
低圧は容量市場にも、発動指令電源として参加の余地があります。定義はこうです。
発動指令電源とは、容量市場において、計量単位(受電点)の期待容量が1,000kW未満の電源や安定的に供給力を提供できない自家発・DR等の組合せ等で期待容量が1,000kW以上の供給力を提供するもの
小さな電源を組み合わせて1,000kW以上にする枠なので、低圧の束ねはここに当てはまります。ただし条件があります。
- 発動指令は一般送配電事業者から実需給の3時間以上前に出る
- アセスメント対象容量以上の供給力を3時間継続して提供することがリクワイアメント
- 評価対象は受電点での逆潮流分のみ
- 発動指令の回数は年12回程度
3時間の継続が要件なので、100kWhの設備なら約33kWとして扱われます。定格50kWで計算すると5割ほど過大になります。
需給調整市場の指令と発動指令が同時に来た場合の扱いも整理済みです。調整力指令を優先し、重複する容量分は容量市場側の要件を満たしたものとみなす、という方向です(2023年6月の第39回小委員会)。
ここからが、まだ決まっていない部分です
低圧が需給調整市場に入る方式を機器個別計測といいます。受電点ではなく機器そのものを計測する方式です。この方式と容量市場の組み合わせに、論点が残っています。
計測している場所が違うのです。容量市場は受電点の計量値でアセスメントします。一方、機器個別計測で需給調整市場に入ったリソースは、機器点の計測値に簡易的な変圧器ロスを掛けて受電点に換算した値を使います。
受電点換算用の簡易損失率と実際の損失率が異なる場合(実際はほぼ100%異なることになる)
事務局の資料にこう書かれています。そのうえで、結論はまだ出ていません。
つまり、容量市場で発動指令電源として評価されている受電点以下のリソースに関しては、機器個別計測の対象外になり得るともいえるが、機器点の場合において、容量市場における発動指令電源のアセスメントで正しく評価できるかについては改めて検討が必要であると考える。
収支の表で需給調整と容量市場を二階建てにしているものを見かけるが、その二階が同じ設備で同時に成り立つかは、いま検討中の論点じゃ。「対象外になり得る」と事務局の資料に書いてある段階でな。積み上げた数字を見せられたら、どちらの計測方式を前提にしているか聞いてみることじゃ。
はかせ/制度解説積み上げが否定されたわけではありません。ただ、確定した前提として収支に載せる段階ではないということです。
市場の側も動いています
2026年度から全商品が前日取引になりました。入札の受付は実需給の前日11時30分から14時、約定処理は前日15時までです。週間商品だった頃に比べ、応札の余力が読みやすくなります。
一方で、応札不足への対策は続いています。需給調整市場に供出を義務づける制度的措置は、2026年4月からの導入を見送る方向で、技術的な検討は概ね完了、市場状況に応じて再開とされています。
アグリゲーターに確認しておくこと
以上を踏まえると、契約前に聞くべきことがはっきりします。
| 質問 | なぜ聞くか |
|---|---|
| どの商品に応札しますか | 二次調整力①は専用線のみで、低圧の分散地点では成立しにくい |
| 一次調整力はオフライン監視ですか | オフライン監視なら専用線が不要で、応動要件も30秒以内に緩む |
| いま何MW束ねていますか | 1MWに届かないと応札自体ができない |
| 上げ下げのどちらを前提にしていますか | 現行は上げ区分のみ調達 |
| 容量市場の収入を見込んでいますか | 見込むなら、機器個別計測との関係をどう整理しているか |
最後の質問に具体的に答えられるかどうかは、相手の理解度を測る材料になります。
よくある質問
20基そろえないと始められないのですか。 自分で20基そろえる必要はありません。アグリゲーターが他の事業者のリソースと合わせて束ねます。ただし、そのアグリゲーターが1MWに届いているかどうかは確認する意味があります。
どの商品が一番稼げますか。 商品ごとに単価も約定のされ方も違い、時期によって変わります。確定した順位はありません。収支は複数のシナリオで見てください。
容量市場の収入は当てにできませんか。 当てにできないとは言えません。整理が進めば通る可能性があります。現時点で確定した収入として収支に組み込むのは早い、という位置づけです。
低圧単体で市場に出せる日は来ますか。 最低入札量が1MWである以上、束ねる形が前提です。緩和の議論は本記事の時点では確認できていません。
ご相談の前に
低圧の全体像は低圧系統用蓄電池とは、アグリゲーターの比較手順は低圧蓄電池のアグリゲーターをどう選ぶかにまとめています。容量市場そのものの動きは容量市場の指標価格が約2倍に、需給調整市場の単価の前提は上限価格が9月1日から10円へをご覧ください。
投資・法人としての検討は投資家・法人の方へにご相談ください。
この記事の参照元
- 電力需給調整力取引所「需給調整市場の商品要件と取引スケジュール 第6版」(2026年3月13日)— 5商品の応動時間・継続時間・回線要件・最低入札量1MW・刻み幅1kW・上げ区分のみ調達・前日取引の時間割は本資料によります
- 電力広域的運営推進機関「発動指令電源の機器個別計測での扱いについて」(2026年3月3日 第60回需給調整市場検討小委員会 資料2)— 発動指令電源の定義、3時間継続のリクワイアメント、年12回程度、調整力指令の優先、機器個別計測における受電点換算と残された論点
- 電力広域的運営推進機関「需給調整市場検討小委員会における議論の方向性と整理(年度報告)」(第60回 資料3)— 応札不足対応の一覧、制度的供出義務化の見送り方針
引用は各資料の公表時点の記載によるものです。検討中の事項は今後変わります。実際の検討にあたっては最新の公表資料をご確認ください。