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Column | 低圧蓄電池

需給調整市場の1年で何が起きたか ― 募集枠が半分、応札は3〜10倍、そして「他の商品へ逃げる」は成立しません

2026.09.14 ・ 低圧蓄電池

「低圧も需給調整市場に出せるようになった」という話は、2026年4月の解禁前後にたくさん流れました。ところが解禁されてからの市場がどうなったかは、ほとんど語られていません。

当社は電力需給調整力取引所(EPRX)が公表している一次オフライン市場の確報値28か月分を当社でコマ単位に再集計しました。2024年4月から2026年7月までです。この記事は、その数字で2025年度と2026年度を並べたものです。

結論を先に

  • 主要エリアの募集量はほぼ半分になりました。東京は203.0MWから89.0MWです
  • 応札は3〜10倍に増えました。東京は49.9kW換算で423基相当から1,453基相当です
  • 参加者が殺到したエリアから、単価と約定率が先に崩れています。九州の平均単価は18.90円から8.50円へ落ちました
  • 「一次オフラインが埋まったら他の商品へ」は成立しません。移る先はすでに飽和しています
  • それでも東京・東北は実効約定率が9割前後を保っており、エリアで結論が割れます

1年で何が起きたか

一次オフライン(EPRXの商品コード1-1)は、簡易指令システムで参加できるため、低圧蓄電池が実質的に入れる主戦場です。その市場の2025年度と2026年度を、エリア別に並べます。

エリア 募集量(MW) 応札(49.9kW換算) 充足率 平均単価 量約定率
東京 203.0 → 89.0 423 → 1,453基 10.4% → 81.5% 16.25 → 11.76円 98.6 → 94.4%
中部 153.1 → 75.8 121 → 1,083基 4.0% → 71.3% 18.42 → 12.76円 91.9 → 73.3%
九州 140.8 → 62.9 200 → 910基 7.1% → 72.1% 18.90 → 8.50円 91.0 → 52.7%
中国 164.2 → 73.9 39 → 407基 1.2% → 27.5% 18.08 → 11.18円 95.7 → 49.0%
東北 94.7 → 51.5 13 → 209基 0.7% → 20.2% 18.62 → 14.50円 99.7 → 88.3%

左が2025年度、右が2026年度(いずれも確報値・電源属地別)です。

東京の募集量は203.0MWから89.0MWへ。半分以下です。一方で応札は423基相当から1,453基相当へ、3.4倍に増えました。充足率は10.4%から81.5%へ跳ね上がっています。

2025年度は「応札が足りなくてほぼ全量が上限価格で約定する」市場でした。2026年度は「枠が減って参加者が殺到する」市場に変わりました。1年で市場の性格が入れ替わっています。

なぜ募集枠が減ったのか

参加者が増えたから枠が減ったのではありません。順番が逆で、制度側が募集量を絞る方向に動いています。

電力広域的運営推進機関の需給調整市場検討小委員会では、市場の外で確保されている調整力(自然体余力)の実態を調べ、その分を募集量から差し引く検討が進められています。2025年度の実績として、応札不足への対応を中心に、市場外調整力や緊急時調整力の見直しによる募集量の控除が挙げられています。

上限価格の引き下げが「価格を削る」施策なら、こちらは「量そのものを削る」施策です。売り手から見ると、どちらも売り先の縮小になります。上限価格の話手数料の話は別の記事にしていますが、根は同じところにあります。

応札が増えると、何から壊れるか

九州が分かりやすい例です。募集量が140.8MWから62.9MWへ減る一方で、応札は200基相当から910基相当へ4.5倍。充足率は72.1%です。

その結果、九州の平均単価は18.90円から8.50円へ半分以下になり、量約定率も91.0%から52.7%へ落ちました。単価と約定率が同時に壊れています。

この「同時に壊れる」がいつ起きるのかを、当社は全7商品×9エリア×2026年4〜7月の250セルを充足率で層別して調べました。

充足率 セル数 単価(中央値) 実効約定率(中央値)
0〜80% 85 3.92円 66.3%
80〜120% 55 3.25円 61.8%
120〜200% 51 2.44円 64.4%
200〜300% 28 2.84円 72.8%
300%超 31 1.70円 41.6%

充足率が上がっても、200%までは約定率はそれほど落ちません。安く出せば通るからです。ところが充足率300%超では単価1.70円・実効約定率41.6%と、両方が同時に崩れます。ここが「もう入っても取れない」水準です。

「他の商品へ逃げる」は成立しません

一次オフラインが混んできたら、二次調整力や三次調整力に移ればいいのではないか。営業の現場でもよく聞く話です。当社も一度はそう考えました。

数字を見ると、成立しません。2026年7月・全国の状況です。

商品 低圧の参加 枠(高圧1.95MW換算) 充足率 単価
一次オフライン 254基 65% 10.27円
二次調整力② 479基 382% 2.36円
三次調整力① 1,326基 209% 2.22円
三次調整力② 362基 222% 1.88円
一次調整力(専用線) × 722基 122% 4.33円
二次調整力①(専用線) × 491基 211% 2.61円

低圧が入れる4商品のうち、まだ埋まっていないのは一次オフラインだけです。二次調整力②の充足率は382%、三次は209〜222%。上の層別表で「両方が壊れる」と出た300%超の水準に、二次②はすでに入っています。単価も2円台で、一次オフラインの5分の1です。

移る先は、移る前から埋まっています。

それでもエリアで結論が割れます

ここまで読むと「もう遅い」と受け取られそうですが、そうではありません。直近3か月(2026年5〜7月)の確報値で実効約定率を出すと、エリアではっきり差が出ます。

エリア 実効約定率 初年度単価(上限10円シナリオ)
東京 93.2% 9.97円
東北 87.3% 9.99円
関西 73.7% 9.57円
中部 71.3% 9.86円
九州 50.4% 7.00円
中国 45.5% 8.98円
北海道 37.7% 5.97円
北陸 32.2% 9.06円
四国 20.2% 5.71円

東京と東北は、応札が急増したあとでも9割前後を保っています。関西・中部は7割台。九州から下は5割を切ります。

同じ機械を同じ価格で置いても、東京と九州では収支の結論が反対になります。この差をエリアごとに収支へ落としたものは低圧蓄電所の特設ページに置いています。

いま検討している方に、当社が言えること

3つあります。

1. 参入の順番が結果を決めます。充足率が上がったエリアから先に単価と約定率が落ちています。同じエリアで後から入るほど不利です。

2. 同一エリアに集中させないでください。応札が増えたエリアから崩れるという構造は、自分で自分の約定率を下げることでもあります。当社はエリアを分散させる形でしかご提案しません。

3. 「他の商品もある」という説明は、数字で確かめてください。二次・三次の充足率と単価を提示できない提案は、この飽和を見ていません。

まとめ

2026年度の需給調整市場は、募集枠がほぼ半分になり、応札が3〜10倍に増えました。参加者が殺到したエリアから単価と約定率が崩れ、低圧が移れる他商品はすでに飽和しています。

それでも東京・東北の実効約定率は9割前後を保っています。市場全体で語らず、エリアで判断してください。

当社では設置予定地のエリアごとに実効約定率を出し、成立するかどうかを先にお伝えしています。土地をお持ちの方も、これから探す方も、お問い合わせからエリアだけお知らせください。

投資・法人としての検討は投資家・法人の方へをご覧ください。

この記事の参照元

  • 一般社団法人電力需給調整力取引所(EPRX)「取引結果(確報値)」— 2024年4月〜2026年7月の一次オフラインほか各商品の募集量・応札量・約定量・約定価格。当社がエリア別・コマ単位に再集計
  • 電力広域的運営推進機関「需給調整市場検討小委員会 第60回 資料3」(2026年3月3日)— 課題8-3 市場外調整力(自然体余力)の実態調査および募集量からの控除検討、2025年度の募集量控除の実績
  • 一般社団法人電力需給調整力取引所「需給調整市場 商品要件」(第6版・2026年3月13日)— 各商品の回線要件(低圧が参加できる商品の判定に使用)

「49.9kW換算」「高圧1.95MW換算」は、公表されているMW値を当社が台数に置き換えたものです。実効約定率=応札ありコマ率×量約定率(電源属地別)で、公表値そのものではなく当社の定義による集計値です。市場の状況は月ごとに変わるため、検討時点の最新の確報値でご確認ください。

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