Column | 低圧蓄電池
需給調整市場の売買手数料が2026年度に倍になりました ― 自社モデルに入っていなかった年4万8,888円の話
2026.09.13 ・ 低圧蓄電池
需給調整市場の制度改正といえば、今は上限価格の引き下げと募集量の見直しの話ばかりです。どちらも収入に直接効くので当然なのですが、その陰で費用のほうも静かに動いています。
EPRX(電力需給調整力取引所)の売買手数料が、2026年度から倍になりました。
結論を先に
- 売買手数料は2025年度0.03円/ΔkW・30分 → 2026年度0.06円/ΔkW・30分(いずれも税別)
- 49.9kWで全コマ応札すると年5万2,455円。東京の実効約定率で計算すると年4万8,888円
- 金額としては初年度純益の0.80%。1,900万円の投資に対して0.26ポイント
- 回収年数は3.7年のまま変わりません。ただし東北・関西・中部は0.1年伸びます
- 問題は金額より誰が払うのか。アグリゲーター手数料と二重になっていないか、契約で確認してください
いくらになるのか
単価はEPRXが公表しています。2026年1月16日の公表資料で、2026年度の売買手数料単価を0.06円/ΔkW・30分(税別)としています。2025年度は0.03円でしたから、ちょうど倍です。
低圧の標準的な構成(AC49.9kW)で計算します。
0.06円 × 49.9kW × 48コマ × 365日 = 52,455円/年(全コマ応札した場合)
実際には約定したコマにだけかかると考えると、東京エリアの実効約定率93.2%で、
52,455円 × 93.2% = 48,888円/年
年4万8,888円です。2025年度の単価なら半分の2万4,444円だったので、増えたのは約2万4,000円ということになります。
正直に書くと、当社のモデルにも入っていませんでした
この記事を書くきっかけは、うちの収支モデルを点検したことでした。結果から言うと、当社のモデルにも入っていませんでした。
さらに調べると、4社の費用項目を1つずつ並べて比較した社内資料が残っていて、そこにこう書いてありました。
| 費目 | A社 | B社 | C社・自社 |
|---|---|---|---|
| 需給調整市場手数料 | 60,000 | 計上なし | 計上なし |
4社の費用表を並べたとき、この手数料を計上していたのは1社だけでした。
計上している側が実務的に正しいはずです。市場に出す以上、市場に手数料を払わないという扱いにはなりません。計上していない資料は、その分だけ収支がよく見えます。
金額より、誰が払うのかのほうが問題です
EPRXの売買手数料は、市場の取引会員に対して課されます。蓄電所のオーナーは市場会員ではないので、直接EPRXに払うことはありません。払うのはアグリゲーターです。
では、オーナーの収支には関係ないのか。そうとは限りません。アグリゲーターの手数料体系が「市場手数料込み」なのか「別建て」なのかで、答えが変わります。
- 込みなら — 提示されている手数料率の中に入っているので、オーナー側で別に引く必要はありません
- 別建てなら — 売上から追加で引かれます。提示された利回りは、その分だけ高く出ています
当社が使っているモデルは手数料を売上×10.6%(率のみ)で置いていますが、この算式そのものが非開示で、10.6%は既存資料からの想定値です。書面で条件を回収するまでは確定した数字として扱えません。ここは正直に書いておきます。
回収年数への影響
約定した分だけ手数料がかかるとして、エリアごとに計算しました。
| エリア | 手数料 | 初年度純益(前) | 初年度純益(後) | 回収(前) | 回収(後) |
|---|---|---|---|---|---|
| 東京 | 48,888円 | 609万円 | 604万円 | 3.7年 | 3.7年 |
| 東北 | 45,793円 | 564万円 | 560万円 | 4.0年 | 4.1年 |
| 関西 | 38,659円 | 434万円 | 430万円 | 5.7年 | 5.8年 |
| 中部 | 37,400円 | 432万円 | 429万円 | 5.7年 | 5.8年 |
| 中国 | 23,867円 | 202万円 | 200万円 | 回収せず | 回収せず |
| 九州 | 26,437円 | 158万円 | 156万円 | 回収せず | 回収せず |
回収年数は3.7年のまま変わりません(東京)。東北・関西・中部で0.1年伸びるだけで、成立する/しないの判定はどのエリアでも変わりませんでした。
つまり、この費目を入れ忘れていても結論は動かなかったということです。それでも記事にしているのは、金額の大小ではなく、入っているかどうかを確かめられる状態にしておくことが大事だからです。
契約で確認してほしい2つのこと
提案書を受け取ったら、この2つを聞いてください。
1. 需給調整市場の売買手数料は、費用に入っていますか
費用一覧に「需給調整市場手数料」や「市場手数料」の行があるかを見てください。無ければ、入っていないか、アグリゲーター手数料に含まれているかのどちらかです。どちらなのかを聞いてください。
2. アグリゲーター手数料の算式を、書面でもらえますか
率だけなのか、基本料が別にあるのか。基本料方式は約定率が落ちたときに実効率が跳ね上がります。率のみの契約なら、約定率が落ちても実効手数料率は動きません。ここは条件として大きな差になります。
まとめ
売買手数料の倍増そのものは、低圧の収支をひっくり返す規模ではありません。年5万円弱で、回収年数はほぼ動きません。
ただし、上限価格の引き下げと同じ時期に起きていることは意識してください。収入側が削られ、費用側が増えています。単価だけを見ていると、二重に効いていることを見落とします。
当社では設置予定地のエリアごとに、実効約定率を出したうえで収支をお渡ししています。お手元の提案書の前提を並べ直す形でも構いません。お問い合わせからご連絡ください。
投資・法人としての検討は投資家・法人の方へをご覧ください。
この記事の参照元
- 一般社団法人電力需給調整力取引所「需給調整市場2026年度売買手数料単価の見通しおよび単価の変更に係る取引規程の改定について」— 2026年度の売買手数料単価
- 一般社団法人電力需給調整力取引所「需給調整市場 2026年度売買手数料単価の見通しの公表および取引規程の改定に係る意見募集結果について」(2026年1月16日)— 意見募集の結果と改定の経緯
- 資源エネルギー庁「需給調整市場について」(2026年1月23日 資料4)— 前日取引化を含む2026年度の制度変更
手数料単価は税別です。収支の試算はすべて当社モデルによるもので、前提が変われば結果も変わります。アグリゲーターの手数料体系は各社で異なるため、実際の条件は契約書でご確認ください。