Column | 系統用蓄電池
出力制御のとき蓄電池はどの順番で充電されるのか
2026.08.22 ・ 系統用蓄電池
余剰電力が出たとき、蓄電池はどの順番で使われるのか。太陽光・風力を止める前に、蓄電池に充電します。ただし、どの蓄電池でも同じ扱いというわけではありません。条文から整理します。
結論を先に
- 蓄電池への充電は、自然変動電源(太陽光・風力)の出力抑制より前に行われます
- ただし、調整力としてあらかじめ確保されているかどうかで順位が分かれます
- 「2026年4月から変わった」という説明は、条文を新旧で比べた限り確認できませんでした
条文が定める順番
根拠は電力広域的運営推進機関の送配電等業務指針です。「第4節 下げ調整力不足時の措置」に書かれています。
まず第173条。一般送配電事業者があらかじめ確保している設備を使います。
一般送配電事業者及び配電事業者が調整力としてあらかじめ確保する発電設備等について次の各号に掲げる措置を講じる。 一 発電設備等の出力抑制/二 揚水発電設備の揚水運転/三 需給バランス改善用の蓄電設備の充電
それでも余剰が解消できない場合が第174条です。ここに順位が明示されています。
一 一般送配電事業者及び配電事業者が調整力としてあらかじめ確保していない発電設備等について…… ア 火力電源等の発電設備等の出力抑制/イ 揚水発電設備の揚水運転/ウ 需給バランス改善用の蓄電設備の充電 二 長周期広域周波数調整 三 バイオマスの専焼電源の出力抑制 四 地域資源バイオマス電源の出力抑制 五 自然変動電源の出力抑制 六 業務規程第111条に定める本機関の指示に基づく措置 七 長期固定電源の出力抑制
太陽光・風力にあたる自然変動電源は第5号です。蓄電池への充電は第1号ウなので、4つ手前にあります。
分かれ目は「あらかじめ確保しているか」です
条文は同じ「需給バランス改善用の蓄電設備の充電」を、二度書いています。一度目が第173条、二度目が第174条第1号ウです。違いは一つだけ、一般送配電事業者が調整力としてあらかじめ確保しているかどうかです。
確保されている蓄電池は、余剰が見込まれた段階で先に使われます。確保されていない蓄電池は、第173条の措置でも足りなかったときに出番が来ます。
同じ設備、同じ場所でも、契約の有無で扱いが変わるということです。
「2026年4月に変わった」を確かめました
「2026年4月から、発電を止める前にまず蓄電池に充電する運用が優先されるよう整理された」という説明を見かけます。条文で確かめました。
送配電等業務指針の令和7年4月1日変更版と令和8年4月1日変更版の第4節を比べたところ、第173条・第174条の文言は一字も違いませんでした(差はPDFのページ番号のみ)。
つまり、この順序は2026年4月に新設されたものではなく、以前から定められていたものです。新しく決まったことのように書かれた記事を読むときは、条文に当たったほうが確かです。
制度の記事は「今年から変わった」と書いたほうが読まれるからのう。じゃが業務指針は新旧が両方公開されておる。並べて読めば済む話じゃ。変わっていないものを変わったと書くと、次に本当に変わったときに気づけなくなる。
はかせ/制度解説実務ではどう効くか
補助金の審査で、送配電事業者と充放電制御に関する契約を結ぶ事業者の評価を引き上げる方向が示されています。条文の構造を見れば、その理由が分かります。契約のある蓄電池は第173条、ない蓄電池は第174条。使われる順番が違うのです。
低圧の蓄電池は、単体で一般送配電事業者と調整力の契約を結ぶ規模ではありません。アグリゲーターが束ねたうえで、その束が調整力として確保されるかどうかが問われます。アグリゲーターを選ぶときに聞いておく価値があります。詳しくは低圧蓄電池のアグリゲーターをどう選ぶかにまとめています。
出力制御には2種類あることに注意
ここまでは需給バランスの話です。エリア全体で電気が余ったときの順番でした。
これとは別に、系統の混雑による出力制御があります。送電線や変圧器の容量を超えそうなときに、その区間の電源を絞るものです。2025年3月に中部エリアで全国初の系統制約による再エネ出力制御が実施され、2025年11月には北海道エリアでも実施されています。
2つは仕組みが別で、蓄電池の扱いも別に整理されています。「出力制御」と一言で書かれている記事を読むときは、どちらの話かを確かめてください。
よくある質問
蓄電池を置けば太陽光の出力制御はなくなりますか。 なくなりません。順番として蓄電池の充電が先に来るというだけで、それでも余剰が解消できなければ第5号の自然変動電源の出力抑制に進みます。
うちの蓄電池は第173条と第174条のどちらですか。 一般送配電事業者が調整力としてあらかじめ確保しているかどうかで決まります。アグリゲーター経由で参加している場合は、その束がどう扱われているかを確認してください。
充電できる機会が増えると収益は上がりますか。 充電の機会と、その時間帯の価格は別の話です。安く充電できる機会が増えることと、放電時に高く売れることは、どちらも成り立って初めて収支に効きます。
条文はどこで読めますか。 電力広域的運営推進機関のサイトで、送配電等業務指針が版ごとに公開されています。第4節が該当箇所です。
ご相談の前に
低圧系統用蓄電池の全体像は低圧系統用蓄電池とは、市場に出すための条件は低圧蓄電池を束ねて市場に出す条件をご覧ください。投資・法人としての検討は投資家・法人の方へにご相談ください。
この記事の参照元
- 電力広域的運営推進機関「送配電等業務指針」(平成27年4月28日施行/令和8年4月1日変更)第4節 下げ調整力不足時の措置 第173条・第174条 — 措置の順位は本条文によります
- 電力広域的運営推進機関「送配電等業務指針」(令和7年4月1日変更)— 新旧比較に使用しました
- 送配電網協議会「再生可能エネルギーの最大限の利用に向けた取組み」(2026年4月27日更新)— 優先給電ルールの全体像、系統制約による出力制御の実績
引用は各資料の公表時点の記載によるものです。制度は改正されます。実際の検討にあたっては最新の公表資料をご確認ください。