系統用蓄電池 低圧系統用蓄電池 営農型太陽光 nonFIT太陽光・PPA 営農型の是正・再生 販売代理店募集 土地所有者の方へ 投資家・法人の方へ 会社概要 お知らせ・コラム 土地・案件の相談

Column | 低圧蓄電池

低圧系統用蓄電池に中小企業経営強化税制が使えない理由

2026.08.21 ・ 低圧蓄電池

「蓄電池も即時償却できます」という説明を見かけます。ただ、それがどの制度の話で、系統用蓄電池に当てはまるのかは、分けて考える必要があります。公表資料から整理します。

なお、この記事は制度の枠組みを整理したものです。個別の適用可否は必ず税理士にご確認ください。

結論を先に

制度 低圧系統用蓄電池
中小企業経営強化税制 使えません。電気業が指定事業から外れており、入口で対象外
大胆な投資促進税制(2026年度創設) 射程には入るが、投資下限5億円・ROI15%以上

順に見ます。

中小企業経営強化税制には関門が2つあります

この制度は「経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等が、対象設備を新規取得して指定事業の用に供した場合」に適用されます。設備の話に入る前に、事業の話で決まる部分があります。

中小企業経営強化税制の2つの関門 関門① 指定事業か 「電気業、水道業、鉄道業……等は 対象になりません」(手引き 注2) = 売電する蓄電所は電気業 関門② 対象資産か 「販売を行うことが見込まれる電気の量が 2分の1を超える発電設備等を除く」(注1) = 全量売電は該当 当てはめると 低圧系統用蓄電所(全量を市場で売電) ① 対象外 ② 対象外 使えない 工場の自家消費用蓄電池(製造業) ① 製造業=通る ② 売電1/2以下 対象になり得る 「蓄電池も即時償却できる」という説明の多くは、下の行を前提としたものです。
中小企業経営強化税制の2つの関門。売電する系統用蓄電池は指定事業と対象資産の両方で外れます。

関門① 電気業は指定事業から外れています

手引きは指定事業を列挙したうえで、注記でこう書いています。

(注2)電気業、水道業、鉄道業、航空運輸業、銀行業、娯楽業(映画業を除く)等は対象になりません。

列挙されている指定事業は製造業・建設業・農業・卸売業・不動産業などで、電気業は最初から入っていません。

系統用蓄電池を保有して電力市場で売電する事業は、電気業です。設備がどうかを検討する前に、事業の区分で外れます。

減価償却の側から見ても同じです。減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第二(機械及び装置)では、番号31「電気業用設備」の「その他の設備・主として金属製のもの」が17年とされています。資産区分の名前がそのまま電気業で、その電気業が指定事業から外れている、という関係になります。

関門② 売電が半分を超える発電設備等も外れています

仮に事業区分を通ったとしても、対象資産の側にもう一つ注記があります。

※1 発電用の機械装置、建物、建物附属設備については、発電量のうち、販売を行うことが見込まれる電気の量が占める割合が2分の1を超える発電設備等を除きます。

この注記はA類型からE類型まで、すべての類型に同じ形で付いています。全量を市場で売る蓄電所は、ここでも外れます。

入口と設備の両方で外れるので、系統用蓄電池でこの制度を組み立てる余地は、実質的にありません。

なお、自家消費が中心であれば話は別です。工場(製造業)に置いて発電量の半分超を自分で使う形なら、両方の関門を通る可能性があります。「蓄電池も即時償却できる」という説明は、この形を指していることが多いものです。

大胆な投資促進税制は射程に入ります

2026年度(令和8年度)に創設された制度です。経済産業省の資料から要件を引きます。

項目 内容
対象業種 原則全ての業種を対象
対象資産 生産等に必要な設備等(機械装置、器具備品、工具、建物、構築物、建物附属設備、ソフトウェア)
投資下限額 35億円以上(中小企業者等については5億円以上)※投資計画期間中の総額
ROI水準 15%以上
措置内容 即時償却または税額控除7%(建物・建物附属設備・構築物は税額控除4%)/控除上限は法人税額の20%
措置期間 令和11年3月31日までに設備投資計画につき法律に基づく確認を受けた者が、確認を受けた日から5年を経過する日までに取得等をし事業の用に供した設備等

業種の限定が「原則全ての業種」である点が、中小企業経営強化税制との決定的な違いです。売電比率による除外規定も、この制度の要件には見当たりません。

措置内容は即時償却と税額控除7%の選択制ですが、税額控除には「法人税額の20%」という控除上限があります。設備を保有するだけのSPCのように課される法人税額が小さい会社では、7%の枠を使い切れないことがあります。どちらを選ぶかは、その会社の所得の見込みで変わります。

5億円をどう満たすか

低圧の蓄電池は1基あたり2,000万〜2,500万円ほどです。中小企業者等の投資下限5億円に届かせるには、単純計算で20〜25基が必要になります。

投資下限額は「投資計画期間中の総額」とされています。1基ずつ買うのではなく、計画としてまとめて組めるかどうかが分かれ目です。SPCを立てて複数基をまとめる形が検討されるのは、この要件があるためです。

ただし、まとめれば自動的に通るわけではありません。

愛知県内の低圧蓄電所。1基あたりの投資額は2,000万円台で、税制の投資下限額とはまだ距離があります
愛知県内の低圧蓄電所。1基あたりの投資額は2,000万円台で、税制の投資下限額とはまだ距離があります

ROI15%が関門です

投資利益率は、経済産業省が配布している計算シートで次のように定義されています。

投資利益率 = 設備導入に伴い増加する「営業利益+減価償却費」(簡易キャッシュフロー)の年平均 ÷ 設備取得価額の合計

平均をとる期間は、取得する設備のうち最も長い減価償却期間です。蓄電池は17年なので、17年で平均することになります。

ここに構造上の分かりにくさがあります。分子に減価償却費が入るので、17年定額償却なら償却費だけで投資額の年約5.9%(1÷17)が自動的に乗ります。残りの約9.1%を営業利益で埋める必要がある、というのが15%の実際の中身です。

「償却費が入るなら楽なのでは」と読むと逆で、17年という長い期間で平均する分、単年度の好調では持ち上がりません。しかも低圧蓄電池の収支は、需給調整市場の上限価格引き下げ(9月1日から10円へ)の影響も受けます。楽観的な前提で15%を満たす計画を作っても、確認の段階で問われるのは計画の妥当性です。

平均期間の決まり方には、計画の組み方が効きます。蓄電池より耐用年数の長い資産を計画に入れると、平均をとる期間はその年数まで延びます。建物の耐用年数は構造と用途で変わりますが、いずれも蓄電池の17年より長くなります。設備の構成をどう束ねるかで、同じ収益でも数字が変わります。

はかせ

「即時償却できます」と言われたら、どの制度の話かを聞くことじゃ。中小企業経営強化税制なら、まず指定事業に電気業が入っておらんことを確かめなさい。大胆な投資促進税制なら投資下限とROI。要件を言えない相手の話は、そこで止めておくことじゃな。

はかせ/制度解説

期限があります

大胆な投資促進税制は、令和11年3月31日までに設備投資計画の確認を受ける必要があります。確認を受けた日から5年以内に取得して事業の用に供した設備が対象です。

計画の確認には時間がかかります。逆算すると、検討を始める時期はそれなりに前倒しになります。

消費税の扱いは別の話です

売電を行う場合、設備の取得にかかった消費税の扱いは、法人税の償却とは別に検討することになります。課税事業者としての届出の要否やタイミングを含め、こちらも税理士にご確認ください。この記事では扱いません。

よくある質問

中小企業経営強化税制はまったく使えないのですか。 売電する蓄電所としては使えません。指定事業に電気業が入っていないためです。一方、製造業などの事業者が自社の工場に置き、発電量の半分超を自家消費する形であれば、要件を満たす可能性があります。

中小企業投資促進税制ならどうですか。 手引きは「中小企業投資促進税制の対象事業に該当する全ての事業が中小企業経営強化税制の指定事業となります」としています。指定事業の範囲は同じ枠組みなので、電気業が外れる点は変わりません。

低圧を1基だけ買う場合、使える税制はありますか。 大胆な投資促進税制は投資下限5億円(中小企業者等)なので、1基では届きません。他の制度の適用可否については税理士にご相談ください。

SPCでまとめれば必ず適用されますか。 投資下限を満たすことと、ROI15%以上の計画として確認を受けられることは別です。両方が要ります。

建物や造成費も投資額に含められますか。 対象資産には建物・構築物・建物附属設備が含まれますが、措置内容が異なります(税額控除4%)。個別の判定は税理士にご確認ください。

ご相談の前に

案件の規模と構成が分かると、どの制度が射程に入るかの当たりをつけられます。ただし最終的な適用可否は税務の判断になりますので、私たちからは制度の枠組みと事業計画の数字をお出しし、税理士の先生と詰めていただく形をとっています。

低圧系統用蓄電池の全体像は低圧系統用蓄電池とは、投資・法人としての検討は投資家・法人の方へをご覧ください。

この記事の参照元

引用は各資料の公表時点の記載によるものです。税制は改正されます。また、本記事は制度の枠組みを整理したものであり、個別の税務判断を示すものではありません。実際の適用にあたっては、必ず税理士等の専門家にご相談ください。

案件について相談する お知らせ・コラム一覧