Column | 低圧蓄電池
機器点で容量市場に入るといくらになるか ― 100kWhでは定格の3分の2しか応札できません
2026.09.09 ・ 低圧蓄電池
機器個別計測で参入したリソースも、条件付きで容量市場の発動指令電源として扱われることになりました。参入できるかどうかは別の記事で整理しています。この記事はその先、入れたとして実際にいくらになるのかを自社のモデルで計算します。
結論から言うと、低圧の標準的な構成では思ったほど取れません。理由は容量ではなく、時間です。
結論を先に
- 容量市場は3時間出し続けられることが条件。49.9kWなら149.7kWhが要ります
- 100kWhの構成では33.3kWしか応札できません。定格の66.8%です
- 当社の試算では年29万1,633円。1,900万円の投資に対して1.5%ぶんの上乗せにあたります
- 発動指令が来た時間帯は需給調整市場を降りますが、降りることによる損失は年3万3,384円です
- 差し引き年25万8,249円。取りに行く価値はありますが、これで投資判断が変わる規模ではありません
3時間要件が容量を決めています
容量市場の発動指令電源は、登録した容量を3時間続けて出せることが要件です。実効性テストでも6コマ(3時間)の供給が確認されます。
つまり応札できる容量は、定格出力と「kWh÷3」の小さいほうになります。
| 定格出力 | 蓄電容量 | kWh÷3 | 応札できる容量 | |
|---|---|---|---|---|
| 低圧の標準構成 | 49.9kW | 100kWh | 33.3kW | 33.3kW |
| 大容量構成 | 49.9kW | 156.75kWh | 52.3kW | 49.9kW |
| 216kWh級 | 49.9kW | 216kWh | 72.0kW | 49.9kW |
低圧でよく使われる100kWhは、出力49.9kWを2時間しか維持できない構成です。3時間の壁に届かないので、100kWhの構成では33.3kWしか応札できません。
ここは容量を増やす以外に解決策がありません。パワコンの設定でも、アグリゲーターの契約でも変わらない、物理の話です。
実際にいくらになるか
容量市場の単価は、直近のメインオークションで蓄電池が受け取っている水準を使って8,749円/kWで置いています。
8,749円/kW × 33.3kW = 291,633円/年
当社の試算では年29万1,633円です。1,900万円(税込)の低圧蓄電所に対して、年1.5%ぶんの上乗せになります。
大容量構成なら49.9kWをフルに応札できるので、
8,749円/kW × 49.9kW = 436,575円/年
大容量構成との差は年14万4,942円です。15年で217万円。容量を増やすための追加費用がこれを下回るなら、大容量側が有利になります。この判断は2構成の比較のほうで扱います。
「両取り」と言っても、片方は降ります
機器点で参入した場合、発動指令と需給調整市場の指令がぶつかったときは発動指令を優先します。需給調整市場のほうは代替不可申請を出して降りることになります。
ここを「両方フルに取れる」と説明されることがありますが、そうではありません。ではいくら損をするのか、計算しました。
発動指令は年12回程度、1回あたり3時間です。需給調整市場は30分コマなので、
12回 × 3時間 × 2コマ = 72コマ
年間 48コマ × 365日 = 17,520コマ
72 ÷ 17,520 = 0.41%
年間の0.41%を降りる計算になります。東京エリアの当社モデル(初年度のΔkW収入812万円)に当てると、降りることによる損失は年3万3,384円です。
差し引きで見ると
| 年額 | |
|---|---|
| 容量市場の収入 | +291,633円 |
| 需給調整市場を降りる損失 | △33,384円 |
| 差し引き | +258,249円 |
差し引き年25万8,249円のプラスです。取りに行かない理由はありませんが、この25万円で投資判断がひっくり返ることはありません。低圧蓄電所の採算は、依然として需給調整市場でどれだけ約定できるかで決まります。
数字を比べるときに気をつけていること
他社の提案書を並べて比べようとして、うまくいかなかったことがあります。3社の提案書を1つずつ検算したところ、同じ「約定率」という言葉で、95%・76%・ほぼ100%を指していました。
- ある社は「約定率80%」と書いていましたが、みなし出力で15%が上乗せされていて、定格に対する実効は87〜95%でした
- ある社は数字を書かずに、48コマ中36.36コマ=75.8%で固定して組んでいました
- ある社は逆算するとほぼ100%で、回収2.9年という数字はその前提から出ていました
容量市場の収入も同じで、応札できる容量を定格のまま49.9kWで置いている資料と、3時間要件で33.3kWに絞っている資料が混在します。年14万円の差はここから生まれます。
数字を見るときは、利回りや回収年数の前に、その数字がどの容量・どの約定率で計算されているかを先に聞いてください。答えられない相手は、自分で計算していません。
まとめ
機器個別計測で容量市場に入れるようになったのは前進です。ただし低圧の標準構成では、3時間要件によって定格の3分の2しか応札できません。
差し引き年25万8,249円は、あって困るものではありませんが、これを主収入として組んだ収支計画は成り立ちません。容量市場は「おまけ」の位置に置いて、需給調整市場の約定率で判断してください。
当社では設置予定地のエリアごとに、実効約定率を出したうえで収支をお渡ししています。既にお持ちの提案書の前提を並べ直す形でも構いません。お問い合わせからご連絡ください。
投資・法人としての検討は投資家・法人の方へをご覧ください。
この記事の参照元
- 電力広域的運営推進機関「発動指令電源の機器個別計測での扱いについて」(2026年3月3日 第60回需給調整市場検討小委員会 資料2)— 機器点での発動指令優先と代替不可申請の条件、発動指令の回数、受電点での評価対象
- 電力広域的運営推進機関「容量市場業務マニュアル 実効性テスト編」— 実効性テストにおける6コマ(3時間)の供給および3時間前の指令
- 電力広域的運営推進機関「容量市場メインオークション約定結果」(2026年1月20日、同23日訂正)— 蓄電池の要件と応札容量、エリア別の約定価格
容量市場の単価8,749円/kWは直近のメインオークションで蓄電池が受け取っている水準を当社が置いたもので、将来の約定価格を保証するものではありません。収支の試算はすべて当社モデルによるもので、前提が変われば結果も変わります。