Column | 系統用蓄電池
系統用蓄電池とは?
仕組み・収益が出る理由・導入の流れ
2026.06.22 ・ 系統用蓄電池
※ 制度名・しきい値・市場の数値は改定されることがあります。最新の情報は、資源エネルギー庁・各市場の運営機関・電力会社の公表資料をご確認ください。
ここ数年、「系統用蓄電池」という言葉を新聞や業界ニュースで見かける機会が一気に増えました。太陽光のように発電するわけではないのに、なぜ事業として成り立つのか。私たちが土地のご相談を受けるなかでも、ここがいちばん分かりにくいと言われます。この記事では、系統用蓄電池がどういう設備で、どこからお金が生まれ、実際に作るまでに何をするのかを、開発の現場目線でかみくだいて説明します。
系統用蓄電池とは|電気を「ためて、ずらす」設備
系統用蓄電池とは、電力会社の送配電網(系統)に直接つないだ、大型の蓄電池設備のことです。電気が余っている時間帯にためておき、足りない時間帯に放出します。発電所が「電気をつくる」のに対して、系統用蓄電池は「電気の量とタイミングをずらす」役割を担います。
太陽光や風力が増えるほど、晴れた昼間は電気が余り、日が落ちると一気に足りなくなります。この振れ幅をならす受け皿として、蓄電池の必要性が高まってきました。制度の面でも、2022年の電気事業法改正によって、蓄電池からの放電が発電事業として明確に位置づけられています(一定規模を超える場合は発電事業者としての届出が必要です。しきい値は最新の制度をご確認ください)。私が最初にこの分野に触れたときも、「ためる箱」がそのまま電気の事業になる、という発想がいちばん新鮮でした。
太陽光発電所とは役割が違う
同じ再エネ関連の設備でも、太陽光発電所と系統用蓄電池は役割がはっきり分かれます。太陽光は「日射があるときに発電する」一方通行ですが、蓄電池は「充電と放電を行き来する」双方向の設備です。FITやFIPで売電する太陽光と違い、系統用蓄電池は市場や需給調整のしくみに対して充放電し、その差や働きに応じて対価を得ます。
| 太陽光発電所 | 系統用蓄電池 | |
|---|---|---|
| 主な働き | 電気をつくる(発電) | 電気をためて時間をずらす(充放電) |
| 電気の向き | 系統へ送る一方向 | 充電と放電の双方向 |
| 収益の出どころ | FIT/FIPや相対契約での売電 | 卸電力・需給調整・容量市場 など |
| 土地で重視する点 | 日射・広さ・形状 | 系統への近さ・接続余地・搬入 |
太陽光と蓄電池を同じ敷地で組み合わせる形(併設)もありますが、系統用蓄電池は単独で系統につなぐのが基本です。発電所がなくても、蓄電池だけで事業として成立します。
なぜ収益が出るのか|3つの出どころ
「電気をためて放すだけで、なぜお金になるのか」。ここが系統用蓄電池のいちばんの肝です。収益の出どころは、大きく分けて次の3つです。1つに頼り切るのではなく、組み合わせて事業の収支を組み立てます。
① 卸電力市場でのアービトラージ
電気の卸価格は時間帯で動きます。安く余っている時間に充電し、高く足りない時間に放電すれば、その価格差が収益になります。図1で示した「ためて、ずらす」を、そのままお金に置き換えたものです。
② 需給調整市場での調整力
電力は、つくる量と使う量が常に一致していないと品質が保てません。蓄電池は応答が速く、増えすぎ・足りなさすぎをすばやく整えられます。この「調整力」を提供することへの対価が、2つ目の柱です。
③ 容量市場での容量価値
3つ目は、いざという時に電気を出せる「備えそのもの」に対する価値です。実際に放電したかどうかとは別に、必要なときに供給できる状態を保っていることが評価されます。
ポイント
3つの市場は、参加の条件・価格・運用の手間がそれぞれ違います。単独の蓄電池がすべての市場を直接さばくのは難しいため、アグリゲーター(複数の設備をまとめて運用する事業者)と組んで参加する形が一般的です。収益モデルの詳しい中身は、別の記事であらためて掘り下げます。
導入の流れ|用地選定から運用まで
系統用蓄電池の事業は、土地を押さえてから運用が始まるまで、いくつもの工程を順番に通します。私たちが案件を進めるときは、止まりやすい所を先につぶす順番で確認していきます。
とくに②の系統・接続の検討と、③の電力会社との協議は、案件が成り立つかどうかを左右します。ここで「その地点では受け入れが難しい」と分かることもあり、その場合は早い段階で正直にお伝えします。運用が始まってからは、EMS(エネルギー管理システム)やアグリゲーターと組んで、市場の状況に合わせて充放電を回していきます。
最初に確認すること|系統と土地
事業の入口は、いつも「この土地と系統で成り立つか」です。発電量や利回りの試算より先に、現地で確認すべきことを確認します。最初に見るのは次のような点です。
- 変電所・配電線までの距離と、系統に受け入れの余地(空き容量)があるか
- 工事車両が入れる接道・搬入経路があるか
- 高低差や造成の必要性、近隣の住宅との距離
- 浸水・土砂災害などハザード、開発規制や条例
蓄電池は太陽光ほど広さを求めない一方で、系統への近さと接続の余地がものを言います。どんな土地が向くのかは系統用蓄電池の用地に向く土地・向かない土地でくわしく解説しています。小さな土地で検討したい場合は低圧系統用蓄電池という選択肢もあります。
「電柱や電線が近い」「車が入れる」という条件がそろう土地は、蓄電池の検討に向いていることがあります。当てはまりそうな土地をお持ちでしたら、所在地と面積だけでも確認できます。
よくある質問
系統用蓄電池と家庭用蓄電池は何が違いますか?
太陽光発電所がなくても成り立ちますか?
どれくらいの広さの土地が必要ですか?
収益はどれくらい見込めますか?
まとめ
系統用蓄電池は、電気を「ためて、ずらす」ことで、再エネが増えた電力系統の振れ幅を受け止める設備です。卸電力・需給調整・容量市場という3つの出どころを組み合わせて収益を組み立て、用地選定から運用までを順番に通して事業にしていきます。出発点はいつも土地と系統の確認です。気になる土地があれば、対象になりそうかどうかの段階からご相談ください。