Column | 営農型太陽光
営農型太陽光の新ルールが2027年4月施行へ ― 省令案・基本方針案の中身を条文で読む
2026.08.20 ・ 営農型太陽光
営農型太陽光の新しい基準が、条文の形で公示されています。有識者会議の「考え方」ではなく、省令案と基本方針の改正案です。施行日も明記されました。中身を読みます。
いまどの段階にあるのか
2026年7月24日、農林水産省が3件の意見募集を公示しました。受付締切は2026年8月22日23時59分です。
| 案件番号 | 内容 |
|---|---|
| 550004381 | 農地法施行規則および農山漁村再エネ法施行規則の一部を改正する省令案 |
| 550004382 | 設備整備計画の認定等に関する省令の一部を改正する省令案 |
| 550004383 | 農山漁村の活性化に関する基本的な方針を改正する件の案 |
省令案の附則には、こう書かれています。
附則(施行期日)第一条 この省令は、令和九年四月一日から施行する。ただし、第二条の規定は公布の日から施行する。
2027年4月1日施行です。準備できる期間は、およそ1年半あります。
制度の土台が入れ替わります
いちばん大きい変更はここです。農地法の一時転用許可の不許可要件に、次の一項が入ります。
申請に係る事業が営農型太陽光発電である場合にあつては、農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律第七条第三項の認定の見込みがないこと
つまり、農山漁村再エネ法の設備整備計画の認定が見込めなければ、一時転用の許可が下りません。農地法だけで完結していた判断が、再エネ法の枠組みと連動します。
基本方針の改正案には、市町村の裁量についても書かれています。
営農型太陽光発電設備の設置が適当でないと市町村が判断した農用地区域内の農用地については、設備整備区域に含めることはできない
設備の基準
基本方針の改正案から、設備に関する条文を引きます。
遮光率
営農型太陽光発電設備の遮光率(設備直下の農地の面積に対する営農型太陽光発電設備の投影面積の割合をいう。)が30%未満であること。ただし、当該設備が遮光率での判定が困難な設備である場合は、下部の農地において栽培する農作物の生育期間を通じてほ場の全ての地点で日射量の減少率が20%未満であること。
追尾式など遮光率で測りにくい設備には、日射量の減少率20%未満という代替基準が置かれています。ここは報道であまり触れられていない部分です。
支柱と作業空間
ほ場からの最低地上高がおおむね3m以上、かつ、農業機械の通路の幅がおおむね4m以上確保されるよう支柱が設置されており、耕作者が農作業を効率的に行うことができる空間が確保できていること。
数字が具体的に入りました。既存設備の設計を確認するときは、遮光率だけでなくこの2つも見てください。
作物の基準
ここは報道と条文でずれが出ている部分です。「米・麦・大豆を推奨」と紹介されることが多いのですが、条文の要件はそうではありません。
下部の農地において栽培する農作物が、地域で一般的に栽培され、一般的な販路が確立されている品目であること。
米・麦・大豆は、この後に続く一文で例として挙げられています。
なお、これまでの実証研究等によると、米、麦、大豆は、(略)遮光環境下であっても、適切な栽培管理を前提に、(略)単収を確保することが可能である。
つまり推奨品目リストではなく、「遮光下でも単収を確保できることが確認されている作物の例」という位置づけです。他の品目が排除されるわけではありません。
ただし、次の一文には注意が要ります。
「一般的な販路」には一般的に市場価値が認められないものを発電事業者等が買い取る場合は含まれないことに留意すること。
発電事業者が自ら買い取る形は、販路として認められません。 作物の販売先を発電側で用意して形を整える組み方は、通らなくなります。
収穫のタイミングにも条件があります。原則として初年度から毎年収穫できる品目で、やむを得ない場合でも3年以内に計画収量を確保できる品目とされています。
単収の基準は残ります
一時転用許可の要件からは移りますが、基準そのものは基本方針に書かれています。
単収が、同じ年産の当該農地が所在する市町村の区域内の平均的な単収と比較しておおむね2割以上減少するおそれがないものとする必要がある
従来と同じ考え方です。認定後についても、2割以上減少している場合などには市町村が改善措置を指導するとされています。営農の実態が問われる構造は変わりません。
「米・麦・大豆でないと駄目になる」と書いてある記事もあるが、条文はそう書いておらん。要件は「地域で一般的に栽培され、一般的な販路が確立されている品目」じゃ。むしろ効いてくるのは、発電事業者が自分で買い取る形は販路に含めない、という一文の方じゃな。
はかせ/制度解説いま確認しておくこと
施行まで1年半あります。慌てる必要はありませんが、次の3点は早めに見ておく価値があります。
設備の数値。 遮光率、最低地上高、農業機械の通路幅。設計図面から確認できます。基準を外れている場合、改修が必要になるのか、既存分がどう扱われるのかは、今後の運用で決まります。
作物の販路。 誰に、どう売っているか。発電側が買い取る形になっている場合、組み直しの検討が要ります。
市町村の基本計画。 土地のある市町村が、営農型の方針と区域を基本計画に定めているか。定めていなければ、まずそこからになります。
営農の実態が確認できない状態になっている案件の立て直しは、営農型太陽光の是正が必要になるケースと対応の流れにまとめています。農地の活用全般は耕作放棄地・遊休地を太陽光で活用する方法と注意点をご覧ください。
意見を出すこともできます
締切は2026年8月22日23時59分です。e-Govの意見募集ページから提出できます。
業界団体からは、一律の遮光率規制に対する再検討の要望が出ています。日陰を好む作物や、高付加価値作物との組み合わせで成立してきた案件があるためです。現場で営農型を運用されている方の実感は、こうした場面で出す価値があります。
よくある質問
既存の設備はどうなりますか。 既存分の扱いは、省令案の附則と今後の運用で決まります。施行前にされた許可申請についての経過措置が置かれており、基本計画が定められるまでの期間についても規定があります。個別の案件については、所管の農業委員会にご確認ください。
ブルーベリーなどは認められなくなりますか。 条文は品目を限定していません。要件は「地域で一般的に栽培され、一般的な販路が確立されている品目」です。販路が確立していれば該当し得ます。ただし発電事業者が買い取る形は販路に含まれません。
追尾式の設備はどう判定されますか。 遮光率での判定が困難な設備については、生育期間を通じてほ場の全地点で日射量の減少率が20%未満という基準が置かれています。
市町村が基本計画を作っていない場合は。 設備整備計画の認定が前提になるため、基本計画の策定から必要になります。土地の所在地によって進み方が変わることになります。
ご相談の前に
営農型をお考えの方、既存設備の見直しをお考えの方、どちらもご相談ください。所在地・面積・作付けと販路の状況、既存設備であれば遮光率・地上高・通路幅が分かると、現状の位置づけをお伝えできます。
営農型太陽光の進め方は営農型太陽光のページ、是正・再生については営農型の是正・再生にまとめています。
この記事の参照元
- 農林水産省「農地法施行規則及び農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進に関する法律施行規則の一部を改正する省令案」(e-Gov 案件番号550004381、2026年7月24日公示・2026年8月22日締切)— 施行期日および一時転用許可の要件は本案によります
- 農林水産省「農林漁業の健全な発展と調和のとれた再生可能エネルギー電気の発電の促進による農山漁村の活性化に関する基本的な方針を改正する件の案」(e-Gov 案件番号550004383、同上)— 遮光率・地上高・通路幅・品目・単収の各基準は本案によります
- 農林水産省「再生可能エネルギー発電設備を設置するための農地転用許可」— 2024年4月1日施行の現行の枠組み
引用は意見募集にかけられている案の記載によるものです。案は今後の意見を踏まえて変わる可能性があります。実際の計画にあたっては、農林水産省および所管の農業委員会・市町村の最新の情報をご確認ください。