Column | 系統用蓄電池
長期脱炭素電源オークション ― 蓄電池の落札率は46%で最下位でした
2026.08.24 ・ 系統用蓄電池
大型の蓄電池を検討するときに必ず出てくるのが、長期脱炭素電源オークションです。20年間の容量収入が得られる制度ですが、応札年度2025年度の結果を見ると、蓄電池は厳しい数字が出ています。公表資料から整理します。
蓄電池の落札率は46%でした
電力広域的運営推進機関が2026年5月13日に公表した約定結果です。
| 電源種 | 応札容量 | 落札率 |
|---|---|---|
| 原子力(新設・リプレース) | 138.1万kW | 100% |
| 原子力(既設の安全対策投資) | 55.8万kW | 100% |
| アンモニア混焼への改修 | 26.4万kW | 100% |
| 水素専焼 | 25.3万kW | 100% |
| バイオマス専焼 | 10.1万kW | 100% |
| LNG専焼火力 | 303.8万kW | 64% |
| 揚水 | 45.3万kW | 55% |
| 蓄電池 | 125.1万kW | 46% |
蓄電池だけが半分を切っています。応札した125.1万kWのうち、落札は約57万kWにとどまった計算です。
全体は募集割れでした
脱炭素電源の枠は、募集量に届きませんでした。
| 募集量 | 約定総容量 | 約定総額 | |
|---|---|---|---|
| 脱炭素電源 | 500万kW | 426.1万kW | 4,748億円/年 |
| LNG専焼火力 | 292.9万kW | 303.8万kW | 1,444億円/年 |
脱炭素電源は募集500万kWに対して426.1万kWで、枠が余りました。それでも蓄電池の落札率が46%だったということは、価格で通らなかった応札が相当あったことを意味します。
約定総額を約定総容量で割ると、脱炭素電源は1kWあたり年約11万円になります(4,748億円 ÷ 426.1万kW)。ただしこれは電源種を問わない平均で、各電源の落札価格ではありません。マルチプライス方式なので、応札価格がそのまま約定価格になります。
20年の収入と引き換えに、他市場の収益は9割返します
ここが制度の肝です。
電源の固定費水準の容量収入が原則20年間得られ、他市場からの収益は事後的に約9割を還付する仕組み
還付割合は90%と整理されています。つまりこの制度に乗ると、卸電力市場や需給調整市場で稼いだ分の大半は戻すことになります。収入の予見可能性を買う代わりに、上振れを手放す設計です。
実際、公表資料では還付後の金額も併記されています。脱炭素電源の約定総額4,748億円/年に対し、他市場収益の推定還付額を控除した後は3,420億円/年(過去3年平均で試算)とされています。
なお、蓄電池・揚水・LDESについては、発電コスト検証で可変費・設備利用率が公表されていないため還付額の試算が行われておらず、この控除後の金額には含まれていません。実際の還付がどうなるかは別途の確認が要ります。
「20年の収入が確定する」という説明だけを聞くと良い話に見えるが、他市場の収益を9割返す前提じゃ。マルチユースで積み上げた収益は、その分だけ手元に残らん。どちらが得かは、その設備がどれだけ市場で稼げるかによる。両方を並べて比べることじゃな。
はかせ/制度解説蓄電池には上限も設けられています
募集上限の扱いにも、蓄電池特有の整理があります。
蓄電池・揚水・LDESについては、放電・発電のためには蓄電・ポンプアップが必要であり、供給力としての価値が限定的であることから、最大でもそれぞれの募集上限の2倍までと整理されている
「供給力としての価値が限定的」という評価が、制度の設計思想として置かれています。落札率の低さと無関係ではないと読めます。
対象になるのはどんな電源か
参加できるのは、脱炭素電源の新設・リプレース等です。落札容量の内訳を見ると、新設が516万kW(71%)、リプレース等が187万kW(26%)、既設火力の改修が26.36万kW(3%)でした。新設・リプレース等が約97%を占めます。
なおFIT/FIP制度による支援を受けている電源は対象外です。太陽光・風力は、このオークションとFIT/FIPのどちらに参加するかを事業者が選べます。
低圧・中小規模には別の道があります
このオークションは、巨額の初期投資を長期で回収する大型案件のための仕組みです。低圧や中小規模の蓄電所は、規模の面でも手続きの面でも土俵が違います。
低圧が狙うのは、需給調整市場と容量市場の発動指令電源です。参加の条件は低圧蓄電池を束ねて市場に出す条件、収益の組み立て方は系統用蓄電池の収益モデルにまとめています。
大型の数字をそのまま小型に当てはめないでください。還付の仕組みも、募集上限も、この制度に参加した場合の話です。
よくある質問
落札率が低いのは今回だけですか。 本記事は応札年度2025年度の結果を扱っています。回によって募集量も応札状況も変わります。
落札できなかった案件はどうなりますか。 この制度による長期の容量収入は得られません。通常の市場での運用で収支を組むことになります。
他市場収益を9割返すなら、参加しないほうが得ですか。 その設備が市場でどれだけ稼げるかによります。市場収益が小さいと見込むなら固定的な容量収入の価値が相対的に大きく、大きいと見込むなら還付の負担が重くなります。両方の試算を並べて比べてください。
低圧の蓄電池でも参加できますか。 規模の面で現実的ではありません。低圧は需給調整市場と容量市場の発動指令電源が対象になります。
ご相談の前に
想定する設備容量、設置予定地、資金の組み立て方。この3つがわかれば、どの制度が射程に入るかをお伝えできます。低圧の分散型で組むか、大型で組むかの比較からご相談いただけます。
投資・法人としての検討は投資家・法人の方へをご覧ください。
この記事の参照元
- 電力広域的運営推進機関「容量市場 長期脱炭素電源オークション約定結果(応札年度:2025年度)」(2026年5月13日)— 発電方式別の応札容量と落札率、約定総容量・約定総額、他市場収益の還付、募集上限の2倍という整理、参加対象電源
引用は資料の公表時点の記載によるものです。約定結果は応札年度ごとに変わります。落札率は本資料に記載された比率であり、記事中の落札容量は応札容量に落札率を乗じた概算です。実際の検討にあたっては最新の公表資料をご確認ください。