系統用蓄電池 低圧系統用蓄電池 営農型太陽光 nonFIT太陽光・PPA 営農型の是正・再生 販売パートナー募集 土地所有者の方へ 投資家・法人の方へ 会社概要 お知らせ・コラム 土地・案件の相談

Column | nonFIT・PPA

蓄電所を通した電気は「再エネ由来」と言えるのか ― 混ざると価値が失効します

2026.08.25 ・ nonFIT・PPA

蓄電所の収益を語るとき、卸電力・需給調整・容量市場の3つが挙がります。4つ目になり得るのが環境価値です。ただし、いまのままでは蓄電池を通した時点で価値が消えかねません。何が問題で、どう解こうとしているのかを整理します。

蓄電池を通すと、由来が分からなくなります

日立製作所とエネウィルが2026年8月5日に公表した資料に、課題がはっきり書かれています。

送配電網を流れる通常の電力と再エネ電力が同じ蓄電池に充電され混ざった場合、現行システムでは放電された電力のどの部分が再エネ由来であるかを厳密に追跡・識別できません。そのため、蓄電の過程で再エネ本来の環境価値が失効し、需要家へ適切に引き継がれないことが想定されます

太陽光でつくった電気を蓄電池に入れ、夕方に放電する。その電気を「再エネです」と言えるかどうか。言えないというのが現状です。

混ざると、追えなくなります 再エネ電力 系統の通常電力 蓄電所 混ざる 放電 どこが再エネ由来か不明 価値が失効し得る 解こうとしている方向 発電・充放電・受電のデータを30分単位で収集し、同一の基盤で紐付ける 時間ごとの充放電履歴と需給データを照合して、再エネ由来の需給量を算定する データの不一致・消失・二重計上を防ぎ、第三者認証機関が客観的に認定する枠組みを置く
蓄電池の中で電力が混ざる問題と、データのトラッキングで解こうとする方向。

実際に動いている案件があります

抽象論ではありません。北海道で稼働しています。

エネウィルは北海道名寄市内に保有・運用する「名寄1蓄電所」(出力1,999kW、容量8,128kWh)において、五十嵐ホールディングス株式会社が保有・運用する太陽光発電所(出力1,500kWac)で作られた再エネ電力を充電しました。蓄電所に充電された電力は、電力需要の多い時間帯にタイムシフト供給され、近隣4箇所の施設(拠点)で消費されます

出力1,999kWは、高圧の上限を意識した規模です。容量8,128kWhなので、出力に対しておよそ4時間分にあたります。

仕組みは30分単位のデータ照合です

日立の「Storing RE」がどう解いているか、原文から引きます。

同サービスに用いる30分単位の需給データに加え、新たに蓄電所の充放電データを30分単位で収集し同一の情報基盤にて一元管理しています。情報基盤では発電、充放電、および受電の各データを時間単位で紐付ける独自の"需・蓄・給"のトラッキングに基づき、蓄電所内に通常電力と再エネ電力が混ざり合った場合でも、時間ごとの充放電履歴と需給データを照合することで再エネ由来の電力需給量を正しく算定できます

物理的に電子を分けるのではなく、帳簿で追うという解き方です。そのうえで、

第三者認証機関がこれを客観的に認定する枠組みが構築されています

本サービスに係る第三者認証は、一般社団法人パワード・バイ・アールイー認定委員会が実施しているとされています。

はかせ

電気そのものに色は付かん。だから帳簿で追うしかない。ここで大事なのは、自分で「再エネです」と言うのではなく、第三者が認めた枠組みで言えるかどうかじゃ。買い手が求めるのは、証明できる形での再エネなのでな。

はかせ/制度解説

国際基準が厳しくなる方向にあります

なぜいまこの仕組みが要るのか。理由も書かれています。

現在、再エネ由来の電力が有するグリーン価値に関し、温室効果ガス(GHG)排出算定の国際基準改訂が進められており、再エネ電力の需給に対する時間と場所の条件が厳格化される方向です

具体的には2つの考え方です。

考え方 内容
アワリーマッチング(同時性) 企業などが消費する電力と再エネの発電量を1時間単位で一致させる取り組み
供給可能性(同地性) 再エネ電力の調達と使用を同じ物理エリア内(同一グリッド内)で行う考え方

資料は、同地性について「物理制約の少ない環境証書の活用との差別化要素として注目されている」としています。証書を買って相殺する形ではなく、実際に同じ地域で同じ時間に使ったかが問われる方向です。

年間の総量で帳尻を合わせる方法では足りなくなる、ということでもあります。この流れは、時間をずらせる蓄電池にとって追い風にも逆風にもなり得ます。

蓄電所の収益にどう効くか

資料は、環境価値を既存の収益に上乗せする位置づけとしています。

エネウィルが有する系統用蓄電池の実績と運用ノウハウに日立の技術を融合し、現状の収益モデルにグリーン付加価値を提供することで蓄電所を活用した電力事業の高度化と収益化を図ってまいります

つまり、卸電力・需給調整・容量市場の3本柱を置き換えるものではありません。3本柱の考え方は系統用蓄電池の収益モデルにまとめています。

ただし現時点では確定した収入ではありません。証明の仕組みと、それを評価する買い手がそろって初めて価格になります。収支に織り込むのは早い段階です。

低圧の蓄電池ではどうか

本記事で扱った案件は出力1,999kWの高圧です。低圧(50kW未満)の蓄電池でも理屈は同じですが、30分単位のデータを収集して紐付ける仕組みが要る点が実務上の壁になります。

低圧は需給調整市場への参加にも計量の準備が必要で、束ねて市場に出す条件にまとめたとおり、計測方式そのものに未整理の論点が残っています。環境価値の証明を検討するなら、そこと合わせて考えることになります。

よくある質問

証書を買えば同じことになりませんか。 資料は同地性を「環境証書の活用との差別化要素」としています。国際基準の改訂で時間と場所の条件が厳格化されれば、証書だけでは満たせない要求が出てくる可能性があります。

いま蓄電所を持っていれば環境価値を売れますか。 発電・充放電・受電のデータを時間単位で管理・連携する仕組みと、第三者認証の枠組みが要ります。設備を持っているだけでは足りません。

どれくらいの価格になりますか。 本記事で引用した資料に価格の記載はありません。

併設の太陽光がないと使えませんか。 本件は太陽光発電所からの充電を対象にした事例です。系統から充電した電力の扱いは、本資料の記載からは判断できません。

ご相談の前に

蓄電所の規模、併設または近接する再エネ電源の有無、想定する需要家。この3つがわかれば、環境価値を乗せられる形かどうかの当たりをつけられます。

投資・法人としての検討は投資家・法人の方へ、nonFIT・自家消費はこちらをご覧ください。

この記事の参照元

引用は資料の公表時点の記載によるものです。国際基準の改訂は検討中の段階であり、内容は変わり得ます。実際の検討にあたっては最新の公表資料をご確認ください。

案件について相談する お知らせ・コラム一覧