Column | 系統用蓄電池
蓄電池・電源産業戦略への改訂 ― 目標が後ろ倒しになり、補助金の要件が変わります
2026.08.24 ・ 系統用蓄電池
2022年8月に策定された「蓄電池産業戦略」が、2026年6月2日に「蓄電池・電源産業戦略」として改訂されました。名称に「電源」が入っています。蓄電池を持つ側・これから買う側にとって何が変わるのかを、原文から整理します。
目標が3つとも書き換わりました
改訂前と後を並べます。
| 旧(2022年8月) | 新(2026年6月) | |
|---|---|---|
| 国内製造基盤 | 遅くとも2030年までに150GWh/年 | 2030年から2030年代半ばに150GWh/年 |
| グローバル | 2030年に製造能力600GWh/年 | 2025年から2035年に売上高を3倍 |
| 次世代電池 | 2030年頃に全固体電池の本格実用化 | 2030年頃に本格実用化+2030年代半ばに需要規模に応じた製造基盤 |
期限が後ろ倒しになり、指標も変わっています。グローバル目標は「どれだけ作れるか」から「いくら売れたか」に置き換わりました。
なお国内製造基盤については、原文が進捗をこう記しています。「経済安全保障推進法に基づく支援等の政府支援策による投資分を含めて、蓄電池の国内製造基盤は100GWh/年以上に増強される見通し」。目標150GWhに対する現在地です。
蓄電池を買う側に、直接効く記述があります
ここが本題です。原文にこう書かれています。
系統用蓄電池の導入補助金や長期脱炭素電源オークション等において、蓄電池の安全性に関する規格、基準、ガイドライン等に基づく第三者による適合性証明の取得を要件とすること、事故事例や対策の提出を求める等、安全性・信頼性を重視した運用を行う
補助金やオークションの要件として、第三者による適合性証明が求められる方向です。加えて、こうも続きます。
各種ガイドライン等に基づいた適切かつ十分なサイバーセキュリティ対策、サプライチェーンも含めた供給途絶リスク対策等を事業者に求める
価格だけで機器を選ぶと、補助金やオークションで弾かれる可能性があるということです。
安いだけの機器を並べた見積もりは、これから通りにくくなるかもしれん。補助金やオークションを前提に組むなら、第三者の適合性証明が取れる製品かどうかを先に確かめることじゃ。あとから差し替えると設計ごとやり直しになるでな。
はかせ/制度解説判断のよりどころも整備されました
原文に、具体的なガイドラインの名前が出てきます。
製品評価技術基盤機構(NITE)は、2026年5月に「公共調達・重要インフラ向け蓄電池システムの安全ガイドライン」の初版を作成したところであり、より高い安全性や信頼性が求められる場所に導入する蓄電システムの選定における活用促進のため、同ガイドラインの普及やアップデートに取り組む
さらに、公共調達・重要インフラ向け以外についても言及があります。
公共調達・重要インフラ向け以外でも高い安全性・信頼性が求められる定置用蓄電システムについては、同ガイドラインを参考にして、適切な試験機関・認証機関等による安全性・信頼性を担保することを推奨していく
民間の案件でも、このガイドラインが事実上の基準になっていく可能性があります。
なぜ「電源」が入ったのか
名称の変更には理由があります。原文の環境認識です。
従来重視されてきた容量(エネルギー密度(Wh))のみならず、出力(パワー密度(W))等を始め、次世代電池も視野に多角的に蓄電池の競争力を向上させて、総合的な蓄電ソリューションとして提供していく必要あり
蓄電池単体のセル製造で競うのではなく、電源システム全体で勝負する、という転換です。伸びる分野としては「AIデータセンターや系統用長時間容量の蓄電池」が名指しされています。
系統用蓄電池が、国の産業戦略の中で成長分野として位置づけられているということでもあります。
何を確認しておくか
導入予定の機器が第三者の適合性証明を取れるか。補助金や長期脱炭素電源オークションを使う前提なら、機器選定の段階で効きます。落札の状況は長期脱炭素電源オークションにまとめました。
サイバーセキュリティと供給途絶リスクへの説明を用意できるか。事業者に求める、と書かれています。
「安さ」で選んだ機器の出口。安全性・信頼性が評価される市場環境を整備する方向が明示されています。調達の判断軸が価格一辺倒から動きます。
よくある質問
低圧の蓄電池にも関係しますか。 補助金や長期脱炭素電源オークションを使わない場合、直ちに要件になるものではありません。ただしガイドラインを参考にした安全性・信頼性の担保を推奨する方向が示されています。
いつから要件になりますか。 戦略は方向性を示すもので、具体的な適用時期は個別の補助金や制度の要綱で決まります。
目標が後ろ倒しになったのは悪い話ですか。 国内製造基盤の期限は延びましたが、成長分野としてAIデータセンターや系統用長時間容量が名指しされています。市場の見方が変わったというより、実現の道筋が引き直された形です。
全固体電池はいつ使えますか。 2030年頃の本格実用化を目標とし、2030年代半ばに向けて需要規模に応じた製造基盤を確立するとされています。
ご相談の前に
導入を検討している機器の型式、想定容量、補助金やオークションの利用予定。この3つがわかれば、要件に照らした確認をお手伝いできます。
投資・法人としての検討は投資家・法人の方へ、低圧の全体像は低圧系統用蓄電池とはをご覧ください。
この記事の参照元
- 経済産業省「「蓄電池産業戦略」を「蓄電池・電源産業戦略」に改訂しました」(2026年6月2日)— 改訂の背景、3つの目標の見直し内容
- 蓄電池産業戦略推進会議「蓄電池・電源産業戦略」(2026年6月2日)— 旧目標との対比、国内製造基盤の進捗、系統用蓄電池の補助金・長期脱炭素電源オークションにおける適合性証明の要件化、NITEの安全ガイドライン、環境変化の認識
引用は資料の公表時点の記載によるものです。戦略は方向性を示すものであり、個別の制度の要件は各制度の要綱等で定められます。実際の検討にあたっては最新の公表資料をご確認ください。