Column | nonFIT・PPA
屋根置き太陽光は2026年度から義務化されるのか
2026.08.22 ・ nonFIT・PPA
「2026年度から工場の屋根に太陽光が義務化される」と読める記事が増えました。資源エネルギー庁の資料を読むと、少し違います。義務づけられるのは設置そのものではありません。
何が義務なのか
資料の書きぶりはこうです。
事業者に対し、……建築物の屋根に設ける太陽光発電設備……の設置に努めることを求める。
設置は努力義務です。そのうえで、報告に関する部分が具体的な義務になります。
| 出すもの | 誰が | 何を書くか | 初年度 |
|---|---|---|---|
| 中長期計画書 | 全特定事業者等 | 屋根設置太陽光の設置に関する定性的な目標 | 2026年度 |
| 定期報告書 | 設置済み、またはエネルギー管理指定工場等を持つ特定事業者等 | 設置状況・屋根の条件・条件を満たす屋根面積など | 2027年度 |
2026年度に出すのは「定性的な目標」です。設置容量の数値目標を求められるわけではありません。数字が出てくるのは2027年度の定期報告書からです。
対象は特定事業者等(特定事業者、特定連鎖化事業者、認定管理統括事業者、管理関係事業者等)です。このうち特定事業者は、年間のエネルギー使用量が原油換算1,500kl以上の事業者で、全国で約12,000者とされています。
なお提出初年度には例外があります。施行規則の規定で2026年度の中長期計画書の提出が免除される事業者は、2026年度以降で最初に中長期計画書を提出する年度が初年度になります。
どの屋根が報告対象になるのか
ここが実務でいちばん効きます。建物の屋根面積がそのまま報告対象になるわけではありません。
除外される「日常的に使っている場所」には、具体例が挙げられています。避難場所への指定、テニスコート、ヘリポート、屋上庭園。設備でいえば貯水槽、避雷針、煙突、室外機。
一方で、将来使うかもしれないが今は使っていない場所は、除外できません。「臨時に一度使っただけ」も日常的な使用とは認められません。
オンサイトPPAはどちらが計上するのか
自社で買わずにPPAで載せている場合、設備の持ち主はPPA事業者です。ではどちらが報告するのか。資料は明確に分けています。
オンサイトPPA等の場合、設備所有者はPPA事業者であるが、屋根を所有している事業者の判断により設置しているものであるため、設置済み(又は設置予定)の面積に計上すること。また、PPA事業者等は当該屋根について、屋根設置太陽光発電設備の設置権限を持つとは言えないため、設置済み(又は設置予定)の面積に計上しない。
屋根側が計上し、PPA事業者は計上しません。屋根を他社に貸しているだけの場合は、貸した側にとっては「特定の用途」として除外側に回ります。
面積の数え方にも決まりがあります。工場立地法の環境施設面積の算入方法に準じ、原則としてパネル部分の面積です。架台で傾斜をつけている場合は水平投影面積で数えます。
先に調べておくべき3つ
報告のために、屋根について把握しておくべき項目が指定されています。
耐震基準 — 新耐震か旧耐震かを分類します。境目は1981年(昭和56年)6月1日で、この日以降に建築確認が完了していれば新耐震です。旧耐震のうち耐震診断も補強もしておらず、既存耐震不適格建築物かどうか分からない建物は、不適格の側に分類することになっています。
積載荷重 — 構造計算書に記載の値を使えます。報告の単位は kg/㎡ で、構造計算書が N/㎡ の場合は 1kg=9.8N で換算します。
設置権限 — テナントとして借りている場合も、自社の建物を他社に貸している場合も、設置権限を持つ屋根は努力義務の対象です。所有者と賃借人の双方で同じ屋根の面積を書くことになり得るため、契約段階で権限を整理しておくよう促されています。
「義務化」という言葉だけが独り歩きしておるが、設置は努力義務じゃ。ただし報告は違う。しかも旧耐震で診断もしておらん建物は、不利なほうに分類せよと書いてある。屋根の図面と構造計算書が出てくるかどうか、先に確かめておくことじゃな。
はかせ/制度解説罰則は「設置しないこと」には掛かりません
50万円という金額が独り歩きしていますが、これは報告に対するものです。手引きの記載はこうです。
定期報告書による報告若しくは報告徴収に係る報告をせず、若しくは虚偽の報告をした場合、又は立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合は、50万円以下の罰金。命令に従わない場合は100万円以下の罰金。
屋根に載せなかったことへの罰金ではありません。報告しない、あるいは虚偽の報告をしたときの話です。
ただし、報告した内容は外に出ます。設置済みの出力・面積と設置予定の出力・面積は、省エネ法定期報告情報の開示制度で選択開示項目に位置づけられました。開示するかどうかは選べますが、開示制度に参加している事業者にとっては、金融機関や投資家の目に触れる項目が一つ増えることになります。
よくある質問
設置しないと罰則がありますか。 ありません。設置は努力義務です。罰則が定められているのは報告に関する部分です。
2026年度に数値目標を出す必要がありますか。 中長期計画書に書くのは定性的な目標とされています。面積などの数値が求められるのは2027年度の定期報告書からです。
カーポートの太陽光は対象ですか。 建築物でないカーポート型は対象外とされています。パネルの種類はシリコン、軽量シリコン、ペロブスカイト、建材一体型のいずれも対象です。
屋根を他社に貸している場合はどうなりますか。 他社が設置している面積は「特定の用途」として扱われ、自社の設置済み面積には含めません。オンサイトPPAで自社の判断により設置している場合は、逆に自社が計上します。
自家消費なら税制優遇は使えますか。 自家消費が発電量の半分を超える形であれば、中小企業経営強化税制の要件を満たす可能性があります。売電が半分を超える場合は対象から外れます。詳しくは低圧系統用蓄電池に中小企業経営強化税制が使えない理由をご覧ください。
ご相談の前に
屋根の面積と築年数、構造計算書の有無が分かれば、載せられる範囲の見当はつきます。私たちは自家消費型の太陽光と蓄電池を扱っており、投資判断に必要な数字をお出しできます。
土地の活用も含めて検討される場合は土地をお持ちの方へ、法人としての投資は投資家・法人の方へをご覧ください。
この記事の参照元
- 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 省エネルギー課「省エネ・非化石転換法に基づく屋根設置太陽光発電設備の設置余地の報告について」(2026年3月10日)— 措置の概要、提出初年度、除外の考え方、報告対象屋根の1,000㎡基準、オンサイトPPAの計上、面積の数え方、耐震基準と積載荷重
- 資源エネルギー庁「省エネ・非化石転換法の手引き 工場・事業場編(令和8年度改訂版)」— 特定事業者の要件(原油換算1,500kl/年以上)、対象約12,000者、罰則、開示制度
引用は各資料の公表時点の記載によるものです。制度は改正されます。個別の報告義務の有無や記載方法については、所管の経済産業局または省エネポータルサイトの記入要領をご確認ください。